診療方針

方針・ビジョン

アカデミックな考え方をベースに

医療の基本は学問ですから、アカデミックな考え方ができないと的確な医療を提供することはできません。大学病院はカンファレンスがありますし、抄読会もします。学会発表や論文執筆もあるので、まずはそういった環境で1年から1年半ほど、ものの考え方を学んでもらいたいと思います。

その上で、進路を決める際などは上から押し付けるのではなく、各自の希望を尊重するように心掛けています。最終的には全国で活躍する医師、世界に目を向ける医師の育成を目指していますので、やる気と一定の実績があれば海外留学も積極的に推奨しています。

人の一生を診られる診療科

産婦人科は、誕生する前も含めさまざまなライフステージにおける患者さんの診療ができる診療科です。病気を持つ患者さんが苦しんでいる姿も目にしますし、時には残念な結果になることもあります。

でも、そこには出産というよろこびもあり、そのために頑張る妊婦さんもいれば、その前の段階で不妊治療を頑張る患者さんもいます。いろいろな人の、いろいろな人生のステージを垣間見ることができ、非常に豊かな感性を持つことができるのが産婦人科医療の魅力だと感じています。

そういった経験はもちろん、幅が広くレベルの高い医療に一緒に取り組むことができる環境を揃えてお待ちしています。

医療センター大森病院産婦人科の診療の特徴

当院は、東京都大田区の唯一の大学病院および特定機能病院です。
特定機能病院の役割は、①高度の医療の提供、②高度の医療技術の開発・評価、③高度の医療に関する研修、④高度な医療安全体制、の4つになります。
そのため、以下に示す各専門分野において、高度の医療を実行しています。
また、約70万人の人々が暮らす大田区における地域医療としての役割も担っており、特定機能病院としての役割と共に、地域を支える医療体制の提供を行っています。
そのため、産婦人科としても、3次医療施設として病診連携のみならず、1次医療施設としてのウォークインの患者様の受診も受け入れています。

産科

多胎妊娠、早産、胎児異常、妊娠高血圧症候群などのハイリスク妊娠・胎児や自己免疫疾患、糖尿病、循環器疾患、精神疾患など様々な合併症を有した妊婦さんの管理を行っています。また、国内屈指の胎児治療施設として、胎児鏡下内視鏡手術、胸腔-羊水腔シャントチューブ留置術、羊水注入療法などの先端的な医療に精力的に取り組んでいます。国内有数のNICUと協力して母子の未来のために日夜努力しています。

婦人科腫瘍(婦人科がん)

あらゆる婦人科がんを根治することを目指し、進行がんに対しては拡大手術と化学療法あるいは放射線療法を行い、早期がんに対しては機能を温存した縮小手術や低侵襲手術を考慮します。特に難治性と言われる進行卵巣がんや原発性腹膜がんに対しても、血管新生阻害剤を含む術前化学療法と腫瘍減量術による集学的治療を行い、治療成績の向上に努めます。さらにPRAP阻害薬や免疫チェックポイント阻害薬を、コンパニオン診断を用いて適切かつ積極的に導入します。

内視鏡(腹腔鏡下手術)

主に子宮筋腫や卵巣腫瘍などの良性疾患は開腹することなく、内視鏡を用いた腹腔鏡下手術・子宮鏡下手術にてほぼ全症例の手術を行っています。また、より美容的に優れ、痛みの少ないと予想される3.5mmトロカーを用いた腹腔鏡下手術、頸管拡張の必要がない細径子宮鏡下手術、過多月経に対する低侵襲手術であるマイクロ波子宮内膜焼灼術(MEA)も行うことが可能となっております。
悪性腫瘍領域においても婦人科腫瘍専門医と腹腔鏡技術認定医の共同にて適応のあるがん患者に対しては腹腔鏡下にて手術を行っております。また、手術支援ロボットであるda VinciのCertificateを取得している医師が4名在籍しており、今後、手術適応の拡大を図り、悪性腫瘍疾患においても可能な限り腹腔鏡下手術もしくはロボット支援下手術にて行う予定です。

生殖医療(不妊治療)

大学病院としては全国でも有数の症例数をほこり、患者夫婦一組一組に対して最も適したプロトコル(治療の手順)を選択して行う「テーラーメイド(個別化)治療」を実践するために男性不妊部門(泌尿器リプロダクション)とも連携し一般不妊治療から高度生殖医療まで幅広く治療を行なっています。近年、注目されているがん生殖に対しても未受精卵子凍結から卵巣組織凍結まで対応しており他科とも連携をとりながら治療を行なっています。

臨床遺伝

臨床遺伝診療部として診療を行い、全診療科に横断的に対応し、臨床における遺伝学的な問題について、遺伝カウンセリングを中心に診療しています。特に、産婦人科領域、生殖遺伝(不妊症、習慣流産など)、周産期遺伝(出生前診断、高齢妊娠、胎児異常など)では、多くのケースに対応しています。また、乳がんや卵巣がんなど、家族性腫瘍症候群の遺伝カウンセリングに対応しています。新型母体血胎児出生前検査や、不妊症関連遺伝学的検査、家族性乳がん・卵巣癌の検査なども実施しています。