医療関係者の方へ

はじめに

東洋医学(漢方医学)は、日本の伝統医学でもあり、感冒やインフルエンザなどの急性疾患から、月経困難症や更年期症候群など婦人科の症状まで広く用いられてきました。また、いくつかの生薬は西洋薬の起源にもなっています。古くは漢方生薬である麻黄から気管支拡張薬のエフェドリンが抽出されています。またマラリアの治療薬であるアルテミシニンは、2015年のノーベル賞受賞の対象となりましたが、やはり生薬の青蒿から見出されたものです。

一般的な内科外来を行うなかで、治療に成功している、或いはそもそも異常が認められないにも関わらず、様々な悩みをかかえる患者さんを診てきました。東洋医学は、患者さんの訴えをそのまま治療に反映させることができるので、西洋医学を補完するものとして東洋医学に取り組んでいます。

歴史の古い漢方薬ではありますが、医学の進歩や、社会の変化によって新しい活躍の場が与えられています。例えば、高齢化によってフレイル(寝たきりとなることが懸念される状態)の方が増加しています。また、がん治療の進歩によって、がんの長期生存率が向上していますが、治療は成功しても、倦怠感その他の様々な症状で社会復帰に問題をきたしている方も見受けられます。このような患者さんの食欲を回復させたり体力を向上させたりする漢方薬として、最近では十全大補湯や人参養栄湯などが注目されています。
東洋医学科では、これら2つの漢方薬に限らず患者さん一人ひとりの状態に合わせて処方を行っています。

東洋医学とは?

東洋医学は、1500年以上昔の中国で誕生し、長い時間をかけて発展してきた医学です。
身体が冷えているか、熱を持っているか、乾燥しているか、余計な水分があるかなどから病態を判断して、漢方薬や鍼灸を用いて治療を行います。
現代の高度に発達した医学に比べると非常に素朴に見えますが、長い時間をかけた緻密な観察や経験をもとにした医学で、独自の体系を持っています。植物由来の薬を用いるところは民間薬と同じですが、高度に組織化されて、柔軟な応用が可能となっているところが民間医療との相違点と言えます。

東洋医学科の受診について

直接の受診、かかりつけの医療機関から紹介を受けて受診される場合、東邦大学医療センター大森病院内の他科から院内依頼によって受診される場合、すべての受診方法が可能です。漢方薬の処方と鍼灸の施術を行っています。医師が診察して漢方薬か鍼灸か(あるいは両方か)を判断しますが、患者さんご本人に漢方薬か鍼灸かについての御希望があれば、医師にその旨をお伝えください。
東洋医学では患者さんご自身の主観による情報(例えば、暑がりか、寒がりか、食欲があるか、食欲がないか・・など)が重要となりますので、まず初診質問票への記入をお願いしています。その質問票をもとに医師が追加の質問をし、さらに仔細な診察を行います。東洋医学に特徴的な脈診、舌診、腹診も行われます。西洋医学的な検査や治療が必要と考えられる場合には、当科より検査依頼を行ったり、専門科での診察を勧めたりする場合がありますのでご了承ください。
西洋医学の診療科のように、細分化していませんので、お困りの症状がある場合には当科を受診して、どのような治療が可能であるかを医師とご相談ください。