あなたと明日をつなげる医療

顕微鏡下精索静脈瘤低位結紮術 習得法

顕微鏡下精索静脈瘤低位結紮術(ナガオメソッド;N法)習得法
(若い泌尿器科医向け)

泌尿器科生殖専門医の中ではもっとも難しいと考えられているようですが、以下の心構えと手順を踏めば必ず習得できます。
マイクロサージャンの資質として、せっかちでないこと、粘り強く術野に集中できること、確実な手技のためなら時間にこだわらない、などが必要ですので、そうでない先生は、心構えを改めてください。
顕微鏡下精索静脈瘤低位結紮術(ナガオメソッド;N法)の方法は、第一に逆流静脈を1本も残してはいけないということです。1本でも残った静脈に上からの逆流する圧力がかかり再発します。これは、精索静脈瘤手術全体に言えることです。ナガオメソッドの特徴は、顕微鏡下に精管・動脈・リンパ管・神経・静脈を1本1本丁寧に確認して、逆流静脈だけを結紮することです。それは精索外の血管・神経・リンパ管も含みます。これを達成するために以下の項目に注意してもらいます。
  1. 外精血管を挙上するため、精索だけでなく外側皮下組織も含めて挙上します。
  2. リンパ管の拡張を促し、確認しやすくするため、また動脈の攣縮を防ぐため精索に十分局所麻酔を注射してください。
  3. 確認済みの精管・動脈・リンパ管・神経や処理済みの静脈を下に落として術野から消すため(これから処理するものに集中するため)、精索挙上に使うのはペンローズドレーンではなく、小さいペアンまたは細工棒を使用してください。
  4. 観察する組織は、厚さ1-2mmにして向こう側が透けて見えるくらいにしてください。つまり、術者の遠位と近位をけん引し、ガーゼで何度も圧迫してください。術者側へ組織のけん引には、2種類のけん引方法があります。精管・動脈・リンパ管・神経・静脈などをあまり含まない組織は、左手に持ったアドソン攝子で強くけん引して、右手で持ったマイクロ攝子で細かく剥離します。精管・動脈・リンパ管・神経・静脈に接着している組織は左手もマイクロ攝子を持ち弱くけん引しながら剥離します。
  5. 顕微鏡下の剥離の順番は、外精血管周辺組織、精管周辺組織、精巣動脈周辺組織の順番に行ってください。
  6. 外精血管周辺組織には、脂肪組織が多くその中に神経や血管を確認します。血管は動脈1本と静脈1-2本癒合したものが2束程度観察でき、動脈は残して静脈だけを結紮してください。
  7. 精管周辺組織には、精管・神経・精管動脈・精管静脈・リンパ管などが確認されます。精管静脈は逆流静脈ではないので温存しますが、2mm以上の太さの静脈は異常血管として結紮してください。
  8. 精巣動脈周辺組織では、精巣動脈に到達する前に内部に太いリンパ管を複数確認することが多いです(リンパ管は精索被膜側には少ないです)。ここからメインの動脈である精巣動脈にとりかかります。精巣動脈は太いものが1本のこともありますが、中くらいのが複数ある場合もあり、すべての動脈を残します。
  9. 精巣動脈には逆流静脈が網目状に巻き付いています。ここで必要なのが「確実な手技のためなら時間にこだわらない」という気持ちです。ここからは、考古学の発掘調査で、土に埋もれた土器を掘りおこす気持ちで、剥離時、マイクロ攝子のストロークを小さく操作し弱い力で少しずつ剥離します。剥離を数か所行っても癒着して動静脈がはがれない場合は、一度撤退して、患者さんの上側の血管で再度チャレンジします。誤って精巣動脈を傷つけてしまったら、小さい傷なら周囲組織をかぶせ、大きい傷は10-0ナイロンで縫合しますが、そこまでならないように用心深く丁寧に剥離を行います。
  10. 最後に止血が十分であることを確認して創を閉鎖します。