対象疾患
非閉塞性無精子症
非閉塞性無精子症とは、精巣で造精機能の低下が原因で起こる無精子症です。原発性と続発性に大別できます。原発性精巣機能低下は、精巣自体に原因があります。一方の続発性精巣機能低下は、頭部にある視床下部や下垂体機能不全による二次性精巣機能低下を表します。非閉塞性無精子症の頻度としては、精巣自体に問題がある原発性が多いので、この章では原発性精巣機能低下に限って説明します。
原発性精巣機能低下の原因について
特発性と呼ばれる原因不明な症例が一番多いです。染色体・遺伝子異常による症例も比較的多く報告されています。具体的には、47,XXYに代表されるクラインフェルター症候群が10.8%と最も頻度が高く、その他の性染色体異常(1.8%)、常染色体異常(1.1%)が続きます。
がん治療で用いられる抗がん剤や精巣への放射線治療も治療後の無精子症の原因となります。抗がん剤のうち特にアルキル化薬は造精機能への影響が強いとされています。また、精巣への放射線照射は影響が強く、4Gy以上の照射で不可逆的な造精機能障害が起こると言われています。
また、成人後のムンプス精巣炎(流行性耳下腺炎後の精巣炎)の既往や、停留精巣の既往、精巣捻転の既往が無精子症の原因となります。
がん治療で用いられる抗がん剤や精巣への放射線治療も治療後の無精子症の原因となります。抗がん剤のうち特にアルキル化薬は造精機能への影響が強いとされています。また、精巣への放射線照射は影響が強く、4Gy以上の照射で不可逆的な造精機能障害が起こると言われています。
また、成人後のムンプス精巣炎(流行性耳下腺炎後の精巣炎)の既往や、停留精巣の既往、精巣捻転の既往が無精子症の原因となります。
診断
- 問診:
不妊歴、既往歴、内服歴を聴取します。停留精巣、成人後のムンプス精巣炎、がん治療歴の有無を確認します。また、内服薬の有無も重要であり筋肉増強を目的としたタンパク同化ステロイドや脱毛症の治療薬であるフィナステリドやデュタステリドも造精機能障害の原因になることがあるので注意が必要です。 - 診察:
外性器の発育状況や陰毛の程度、触診で精管が触知可能か、精巣の大きさ、鼠径部の手術痕などを確認します。典型的な症例では、精巣は委縮していることが多いです。 - 精液検査:
少なくとも2回行います。検鏡で精子を確認できない場合、精液を遠心分離し、わずかでも精子が含まれていないかどうか確認します。 - ホルモン検査:
LH, FSH, テストステロン, プロラクチン(PRL), エストラジオール(E2)を測定します。典型的な原発性精巣機能低下ではFSHおよび LHは高値を示し、テストステロンは低値~正常を示します。 - 精巣超音波検査:
精巣腫瘍の除外や、精索静脈瘤の補助診断、精巣内微小石灰化の有無の診断に有用です。 - 染色体検査:
Gバンド法や、Y染色体微小欠失検査(AZF検査)を行います。
治療
- 顕微鏡下精巣内精子採取術(micro TESE)
麻酔は局所麻酔で、陰嚢皮膚を切開します。精巣白膜を露出させ、大きく白膜を切開し精巣実質を露出させます。手術用顕微鏡を用いて、太く・蛇行・白色調の精細管を採取し、手術中に培養士が精子の有無を検鏡します。手術時間は1時間~1時間30分となります。当院では、基本的に1回の手術で片方の精巣のみを行います。 - 顕微鏡下精巣内精子採取術(micro TESE)の合併症
精巣組織を採取することで、術後にテストステロン低下を起こすことがあります。特に、47,XXYであるクラインフェルター症候群では術前よりテストステロン低値の症例が多く、術後に低テストステロン血症が持続することが多いです。テストステロン低下による症状は、全身倦怠感、易疲労感、情緒不安定、性欲低下、勃起障害、射精障害があります。症状がひどい場合は、テストステロン補充療法を行うことがあります。 - 顕微鏡下精巣内精子採取術(micro TESE)での精子回収率
平成27年度の全国調査によると695例のmicro TESE症例において精子回収症例は236例(34%)と報告されています。精子回収ができなかった場合は、提供精子を用いた人工授精(AID)や特別養子縁組制度といった選択肢があります。当院ではAIDは行なっていないので、行なっている施設をご紹介致します。