逆行性射精とは、射精感・オルガズムを感じますが、精液が尿道から排出されない状態を指します。オルガズムを感じた後の尿検査で、精子が10～15個以上/強拡大視野に認められた場合に診断されます。つまり、精液が尿道側に排出されずに膀胱側に排出されることで起こる病態です。

　原因は、糖尿病性神経障害や脊髄損傷、骨盤内手術の既往が挙げられます。治療は、薬物療法として三環系抗うつ薬や交換神経作動薬を用います。実際は、三環系抗うつ薬が多く使用されます。三環系抗うつ薬は、セロトニンとノルアドレナリンのトランスポーターを阻害し、アドレナリンの再取り込みを阻害することで交感神経受容体刺激作用を誘発します。その結果、膀胱頸部が収縮し、精液の膀胱への逆流を阻害します。また精嚢や精管の収縮も促す作用もあります。副作用は、口喝、便秘、排尿障害、眠気が認められます。

　全国調査では、逆行性射精の治療としてアモキサピンが広く使われており、有効率は、153例中108例 (70.6%)と高いものでした。しかし、現在ではアモキサピンは販売中止となっており、使用することはできません。そのため、代替えとして三環系抗うつ薬であるイミプラミン塩酸塩が使用されています。イミプラミン塩酸塩は、20ｍｇを夕食後あるいは、眠前に連日服用で開始します。