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第25回 日本病院総合診療医学会学術総会が開催され、活発な討論が行われました。

2022年8月19日(金)、20日(土)に第25回 日本病院総合診療医学会学術総会が岩手県立胆沢病院 総合診療科 渋谷俊介先生の主催で開催されました。メインテーマを『今こそ!病院総合診療』であり、It's never too late to start! と病院総合診療医へのキャリアチェンジを促す画期的なコンセプトで開催されました。渋谷先生自身が外科医でしたが、持病によりメスを持てなくなり、総合診療科へ転向した経験を会長講演でお話しされていました。新型コロナ感染症のため、完全WEB開催となりました。

開会式直後には佐々木陽典先生がシンポジストとして登場しました。
シンポジウム1(8:40 ~ 10:10)「Meet the fascinating general hospitalists!」 ではより良い仕事をするために、信念、熱意、マインドをしっかりと持ち、未来を語り、実践にうつしていくことが重要であるということがまとめとなりました。
シンポジウム2(10:20 ~ 11:50) 「FHGMに必要なミドルクラスのリーダーシップとは?」では 言語化が難しいリーダーシップについて理解を深めることができる内容となりました。
佐々木先生のシンポジウムの裏では一般演題(9:00 ~ 9:50) 「膠原病・アレルギー1」 セッションが行われ、東京医科大学 八王子医療センターで初期研修を行っている甲藤大智先生(東邦大学2022年卒)が「MTX で治療中に子宮原発リンパ腫と診断された関節リウマチ高齢女性の一例」を元気に発表していました。学生時代から大学院講義に積極的に参加し、充実した学生生活を終えて医師となった甲藤大智先生です。今後の活躍が楽しみです。
教育講演(14:20 ~ 15:50) 「症例検討から学部診断推論戦略 by JUGLER (Vol.5)」 にも佐々木先生が登場。器質性VS心因性を考えるときのポイント、心因性は除外診断ではなくうたがう必要があること、原因不明の発熱から診断を考え解剖学的なアプローチをすることで正しい診断に迫ることができることが示されました。
育成賞/指導医賞候補演題(16:00 ~ 17:30) の発表には瓜田が審査員で登場。満点をつけた「水痘・帯状疱疹ウイルス髄膜炎に舌咽迷走神経障害を生じた一例 」(東京べイ・浦安市川医療センター 曽根先生)は2位の結果で、少し残念でした。最優秀賞「COVID-19 罹患後の全身倦怠感に潜在する加齢性性腺機能低下(LOH)症候群と病院総合診療医の役割」(岡山大学 山本先生)の発表も素晴らしく、本学会のレベルの高さを改めて実感しました。
一般演題(15:20 ~ 16:10) 「感染症5」 では宮崎泰斗先生が座長を務めました。
一般演題(16:20 ~ 17:10) 「薬剤」では繁田知之先生が大船中央病院で経験した「ジスチグミンによるコリン作動性クリーゼを呈した一例 」を報告しました。
ChE低値のみでは診断できず、アセチルコリン過剰分泌によるバイタルサインや身体所見から総合的に判断する必要があることを強調する内容です。繁田先生、出向先での症例をしっかりまとめていただき、ありがとうございます。ご指導いただいた中野先生、須藤先生、大変お世話になり、ありがとうございます。

2日目はスポンサードシンポジウム(8:50 ~ 10:20) 「原因不明な繰り返す腹痛に潜在する希少疾患 ~治療可能となった「急性肝性ポルフィリン症」を「見つかる」から「見つける」へ~」が早朝から開催され、佐々木先生が「急性腹症の鑑別診断とAHP」と題してポルフィリン症について講演しました。「実は本物の症例に当たったことがない!」との独白もあるように希少疾患の代表です。肝胆道系を専門とする田妻理事長肝煎りのシンポジウムでした。小医は翌月曜にポルフィリン疑いの症例に遭遇し、早速シンポジウムで学んだことを活用することができました。
2日目は渋谷会長ならではの「夏の怪談?」シンポジウム(13:10 ~ 14:40) 「鍼の世界を覗いてみませんか?-古代より伝わる総合診療の技と英知-」 が開催されました。我々が学ぶ西洋医学はニュートン力学を生命科学に当てはめ、物質とエネルギーの二概念の上に組み立てる機械論的生理学が主流になっています。1958年にKendrew JCがNature誌(vol181: p6625)にクジラの精子ミオグロビン立体構造を発表し、その際「タンパク質のもっとも注目すべき形態は、その複雑性であり、対称性がないことである。これまでのどんなタンパク質構造理論が予測したよりもはるかに複雑であった。」と記載し、生命現象には何らかの形である分子が対応しているという「分子担保主義」に疑問を投げかけています。機械論の対極にある生気論が完全に捨てられないのは、このような背景があります。複雑な生体は分割して分子まで分けて解析しても、再統合したマクロの振る舞いを説明できることは多くありません。総合診療医として、「覗いておくべき世界」の一つを示してくれた渋谷会長に感謝しております。ありがとうございます。
最終セッションはやはしJUGLERでした。シンポジウム3(16:10 ~ 17:40) 「続・臨床研究の極意 by JUGLER- つまずきポイントから解決法を探る -」 が開催されました。
研究のネットワークづくり、論文執筆における注意点などについてかなりつっこんだ議論が行われました。演者の失敗談など、オフレコの話もあり、楽しめる内容でした。
この日は「忘れられない、俺の / 私の一本目!(10:20 ~ 11:50)」という特別企画があり、初めての英語論文作成からacceptまでの苦労話が疲労され、大いに盛り上がりました。掲載された論文を見ると、簡単に論文を作成しているように見えますが、どの先生も悶々とした日々を乗り越えてacceptに漕ぎ着けていることがわかり、何だか安心できる内容でした。

第25回 日本病院総合診療医学会学術総会は渋谷会長のお人柄が溢れる暖かくも、学びの多い内容でした。次回は2023年2月に獨協医科大学 志水太郎教授が宇都宮で開催されます。次回は多くの演題を持って、餃子を食べに行きたいと思います。
佐々木先生、繁田先生、宮崎先生、甲藤先生、お疲れ様でした。次回もよろしくお願いします。
文責:瓜田 純久

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大森病院 総合診療・急病センター

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