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東邦大学医療センター
大森病院 総合診療・急病センター

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第34回日本認知症学会で発表してきました。

認知症は日常診療では決して避けることができない疾患ですが、認知症患者さんが必ずしも十分な医療を受けられているとは言い難い現状です。病院を受診できる環境にない患者さんも少なくありませんが、医師の認知症に対する理解が不十分なために、並存する内科疾患の治療が不十分となってしまう場合もあります。誤嚥性肺炎などもそうですが、認知症診療も粘り強い、かつ優しいマインドが求められます。

学会は内科学会などと異なり、コメディカルの参加も多く、紅葉の始まった青森に多くの会員が集結し、活発な討論が行われました。

また、サテライトプログラムにおいて、レビー小体型認知症の患者さん自身の特別講演をきくことができました。


岐阜川村病院神経内科の田平 武(たびら)先生(順天堂大学客員教授)はアルツハイマー病の予防にサプリメントが有効であることを報告。
  1. 米ぬかのフェルラ酸はアミロイドβの凝集抑制し、モデルマウスで老人斑が減少する。
  2. クルクミン:同様の効果 インド人にアルツハイマーが少ないという疫学報告があるが、人の治験では無効。
  3. DHA:魚食はADの頻度が少ない。血中DHA濃度は認知機能と相関する報告
    Otsuka R: Eur J Clin Nutr 2014:68:503-509
    しかし、ADの介入試験では無効であった。
  4. レシチン(リン脂質:卵黄と大豆)はモーリスで改善。人はMMSEの改善効果あり。
  5. ヒューペルジンA: AchE阻害とNMDA受容体の拮抗作用を持つ。ヒトでも改善効果が示されている。ヒューペルミンエはアリセプト3.8mgに相当。 など、認知症予防における機能性食品の可能性を示されました。

東京都健康長寿医療センター神経内科 金田大太先生はレビー小体型認知症の臨床像について詳細に講演されました。視覚認知、視空間認知の障害、実行機能の障害が前景に出て、記憶は比較的保たれる。幻視が多い、時計をかけない、レム睡眠異常(悪夢)、自律神経症状が多いなどチェックすべき所見は明日からの診療に役立つ内容でした。また、アルツハイマー型認知症の拾い上げには語想起の障害、取り繕い、振り向き徴候(家族を振り返る)が有効であることを示されました。さらにパーキンソンとの類似性と相違点をまとめてくださいました。

脳ドックなどでMRIを受けた方に結果を説明するとき、皆さん一様に認知症になりそうですか?と聞かれます。確かに慢性の虚血性変化が示唆される所見があれば可能性あると答えますが、認知症はSPECTなどの特殊な画像診断以外では「形の異常」として捕らえることが難しいことが多く、医師も確実な診断がむずかしいのが現状です。がんや結核の早期診断をすることが求められる時代が長かった内科医は、形態で異常がないのに頑固な症状を訴える患者さんに対して、思考回路を十分に機能させることができません。しかし、認知症は単独で存在することが少なく、心疾患、呼吸器疾患、糖尿病など、他の疾患が並存することがほとんどです。認知症による誤った服薬が、低血糖、消化管出血など、致命的なイベントを惹起することもあり、認知症は内科疾患においても、大きなリスクとなっています。すなわち、並存疾患を治療する内科医は、認知症の症状を十分把握しながら治療を行わなければなりません。このとき、大きな力になるのが、薬剤師さんです。医師以上に情報を収集してくることが多く、適正な診療に大きく貢献してくれています。さらに発展し、患者さんにフィードバックできる臨床研究において、薬剤師さんの力が必要であると、改めて実感しました。

総合診療において、決して目を背けてはいけない疾患、認知症については、これからも正面から向き合っていきたいと思っています。

文責 瓜田純久