救急医療にこそ求められる”全人的医療”を心がけています。

メディア掲載情報
関連リンク

【お問い合わせ先】

東邦大学医療センター
大森病院 総合診療・急病センター

〒143-8541
東京都大田区大森西6-11-1
TEL:03-3762-4151(代表)

急性虫垂炎と右半結腸憩室炎の臨床的鑑別点に関する研究論文が World Journal of Clinical Casesに掲載されました。

臨床医は症状を聞いた段階である程度考える疾患を絞り込んでおり、お腹を触っている時には頭の中で解剖学の図譜の絵やCT・エコー所見等をイメージしながら触診をしています(外科医は術中所見をイメージしていると思います)。右下腹部痛の患者さんを診る時にも心の中では「急性虫垂炎っぽい」とか「憩室炎っぽい」等と絶えず考えながら動いています。

日本の病院においては結局は腹部CTを撮って診断しますので、ここまでの思考過程があってもなくても変わりはないのかもしれませんが、私は内科医として、画像・血液検査を行うまでの思考過程を大事にしたいと思っています(スラムダンクの主人公のセリフ「左手は添えるだけ」のように、典型的症例においては「検査は添えるだけ」というレベルまで検査前確率を正確に設定できれば理想的です)。

画像診断や血液検査の進歩により病歴聴取や診察の重要性は以前よりも低下しており、病歴や診察に関する研究は若手医師の「で、なんなの?」という問い(So what? question)に弱いかもしれません。しかし、検査がいかに進歩しても、一つの結果に振り回されない為に、常に幅広く情報を集めて判断を繰り返す姿勢は変わらず重要なのではないかと思います。

そういったわけで、僕らが経験や先行研究の組み合わせからなんとなく実感している「憩室炎っぽさ」「虫垂炎っぽさ」を病態生理の観点から説明して、客観的データとして示したいなぁ・・・
と思って書いた論文が遂に掲載されました!

https://www.wjgnet.com/2307-8960/full/v7/i12/1393.htm

欧米諸国では憩室/憩室炎は左半結腸に多いとされていますが、日本を含むアジア諸国では右半結腸憩室炎の頻度が高く、右下腹部痛を訴え、急性虫垂炎が疑われる患者では常に重要な鑑別診断となります。しかし、急性虫垂炎と右半結腸憩室炎の臨床的な鑑別点に関する研究は乏しく、台湾や韓国から単変量比較での研究は報告されていますが、日本発の論文や多変量解析を用いた研究は調べた限りでは存在しませんでした。

本論文は2012年始~2016年末に東邦大学医療センター大森病院に入院した急性虫垂炎236例と右半結腸憩室炎133例の基礎疾患、臨床症状、診察/検査所見を検討したロジスティック回帰分析です。
悪心/嘔吐(オッズ比(OR):3.89)、食思不振(OR:2.13)と高値で虫垂炎が示唆され、長い経過(OR:0.84)、右下腹部痛(OR:0.28)、憩室炎の既往歴(OR: 0.0034)、CRP>3.0 mg/dL(OR:0.25)と低値で憩室炎がより示唆される結果でした。回帰モデルのROC曲線のAUC 0.86と高く、臨床所見により両疾患を鑑別することが可能と考えられました。

自己満足のための論文かもしれませんが、お時間のある時にご一読いただけると幸いです。

多くの暖かいご支援とご指導のおかげで論文掲載の日を迎えることができました。
この場を借りて御礼申し上げます。
World Journal of Clinical Cases

文責: 佐々木 陽典