感染症で入院した高齢者では若年者と比べて白血球の増加に乏しいという印象を以前から持っていたのですが、教科書や論文にははっきり書かれておらず、ずっと気になっていました。
今回、高齢者では白血球増多が乏しいというデータも含めた、高齢者の憩室炎の臨床的特徴に関する論文を日本老年医学会公式英語雑誌Geriatrics and Gerontology Internationalに掲載してもらうことができましたので、シェアさせていただきます。
この論文は高齢者(≧65歳)26名と若年者(16-64歳)211名の急性憩室炎の患者を比較して、高齢者の憩室炎の臨床的特徴を検討したもので、単変量比較では
- 受診時の白血球数は高齢者で若年者より少ない(高齢10,850/mm3 vs. 若年12,600/mm3, p=0.004)
- 高齢者では女性の患者が多い
- 高齢者では左側結腸憩室炎が多い
- 高齢者では免疫抑制状態の患者が多い
という結果でした。
ロジスティック回帰では
- 白血球数 (OR 0.866, 95%信頼区間 0.753-0.996)
- 女性 (OR 2.631, 1.032-6.707)
- 左半結腸憩室炎 (OR 5.810, 2.328-14.497)
が高齢者の憩室炎の独立した特徴点として抽出されました。
本邦では高齢者では女性の罹患率が高くなることはあまり意識してこなかったので個人的にはその点も勉強になりました。
ご興味のある方は御一読いただけると幸いです。
参考資料をご提供いただき、ご協力くださった先生方に感謝申し上げます。