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急性心筋梗塞

疾患の概要

 心臓は筋肉の塊でできた臓器で、1日約7~10万回程度、規則正しく収縮と拡張を繰り返し、全身に血液を送り届ける働きをしています。この心臓の筋肉に栄養、酸素などを絶え間なく送り届けるための血管が冠動脈です。冠動脈は心臓の筋肉の表面に、「冠」のように覆いかかぶさるような形で左右に派生しており、内腔が2~4㎜程度の太さの血管です。高血圧、糖尿病、喫煙、高コレステロール血症などの影響で、冠動脈が傷み、コレステロールが入り込み、そしてプラークと呼ばれる脂質成分の塊を作ってしまいます1)。プラークを覆っている薄い膜が裂けプラークが破裂すると、下図のごとく、冠動脈内で、血栓と呼ばれる血の塊が形成されます。この血栓により急激に冠動脈を閉塞させてしまい、その領域の心臓への血流が途絶えてします。これが「急性心筋梗塞」の発症のメカニズムと考えられています2)

症状

 症状としては、胸の重苦しさ、圧迫感、締め付けられるような感じ、焼き付くような感じと表現される方が多く、痛みが顎や首、肩の方まで放散することもあります。また、冷汗、嘔気、嘔吐、呼吸困難が伴うこともあります。これらの症状が20分以上から数時間以上続くときは急性心筋梗塞の可能性が強く考えられますので、速やかに対応する必要があり、救急車の要請も検討されます3)

診断と治療

 急性心筋梗塞を発症した場合、閉塞している血管を見つけ出し、一刻も早く再開通させることが大切です。そのため、高次医療機関に到着したら直ちに心電図、採血、レントゲン、心臓超音波検査を行います。心電図検査で明らかに心筋壊死を生じている波形の変化が確認されれば採血の結果を待たずに、緊急で心臓カテーテル検査:冠動脈造影検査(CAG)を行なう場合もあります。3)CAGですが、一般的には手首の血管(橈骨動脈)、もしくは鼠径部の血管(総大腿動脈)から、カテーテルという管を挿入します。そして血管をたどって心臓に到達させ、冠動脈の入り口から造影剤を注入し撮影します。3)
 閉塞した血管が見つかれば、直ちにカテーテルを用いて血管を再開通させる治療を行います。これを「心臓カテーテル治療:経皮的冠動脈形成術(PCI)」と呼びます。1977年に世界初のカテーテル治療が行われてから現在に至るまで、技術や機械の性能がめざましく発展し確立された治療法となっております。実際の方法としては、閉塞した血管に細くて柔らかい金属のワイヤーを通過させます。
 その後、血管の大きさを内側から計測し、サイズに合わせたバルーンで拡張させます。バルーンで拡張させただけだと、まだプラークや血の塊(血栓)が残り、再度閉塞してしまう可能性があるため、ほとんどのケースで、メッシュ状の金属の筒(ステント)を留置します。これにより狭窄・閉塞してしまった血管を中から広げて開通させ、心臓の血流を元に戻すことが可能になります3)。病変の形態によっては、カテーテル治療ではなく、心臓血管外科による心臓バイパス手術が選択される場合もあります。

経皮的冠動脈形成術の様子

入院生活の流れ

 急性心筋梗塞の治療後は、ダメージを受けた心臓に対しての治療が始まります。カテーテル治療の進歩と並行して、心筋梗塞後の薬物療法も近年非常に進んできており、予後改善や再発予防のためにも、心筋梗塞後の内服加療は非常に重要となります。
 それらの薬の調整と並行して、入院中は運動療法によるリハビリテーションも積極的に行われます。また生活習慣の見直しとして栄養士による日々の食生活の確認や提案などもさせていただきます。これらの状況によって前後しますが、当院では1~2週間程度の入院を経て退院されるケースが一般的です。

病棟内にある心臓リハビリテーション室の様子

文責:戸谷俊介

参考文献

  1. Kawano H, Soejima H, Kojima S, et al. Japanese Acute Coronary Syndrome Study (JACSS) Investigators. Sex differences of risk factors for acute myocardial infarction in Japanese patients. Circ J 2006; 70: 513–517.
  2. Virmani R, Kolodgie FD, Burke AP, et al. Lessons from sudden coronary death: a comprehensive morphological classification scheme for atherosclerotic lesions. Arterioscler Thromb Vasc Biol 2000; 20: 1262–1275.
  3. 急性冠症候群ガイドライン(2018 年改訂版) JCS 2018 Guideline on Diagnosis and Treatment of Acute Coronary Syndrome

お問い合わせ先

東邦大学医療センター
佐倉病院 循環器内科

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