徐脈性不整脈
- 洞不全症候群
- 房室ブロック
疾患の概要

- 徐脈とは心拍数が50回/分未満になる状態です。脈が遅くなるとめまいや意識消失、体を動かしたときの息切れ等の症状が出ます。
- 脈が遅くなる原因として洞不全症候群と房室ブロックがあります。 心臓の筋肉は電気信号で動いています。心臓の上の方に洞結節という場所があり、そこから規則正しく電気が発生しています。洞結節から心臓の下へ電気の通り道があり、洞結節からの電気がこの電気の通り道を通って心臓の上から下へ電気が流れることで、心臓の筋肉はその電気信号を受け取って上から下に順番に収縮し全身に血液を送っています。
洞不全症候群とは洞結節からの電気の発生が上手くいかなくなり、心拍数が遅くなる病気です。
房室ブロックとは心房と心室の境で電気の通り道が切れてしまい、心拍数が遅くなる病気です。
診断と治療
- 診断は心電図で行いますが、場合によってはホルター心電図(24時間心電図)や運動負荷心電図などを行うことがあります。
- 徐脈性不整脈の主な治療はペースメーカの植込みです。
- ペースメーカには従来の本体とリードから成るペースメーカと、2016年に登場したリードレスペースメーカの2種類があります。従来のペースメーカは前胸部(脂肪と筋肉の間)に本体を植込み、リードは血管を通して心臓内に固定します。リードレスペースメーカは10円玉程の大きさで完全に心臓内に植込みされます。リードレスペースメーカの適応は基本的に心房細動のある徐脈性不整脈の方です。

入院生活の流れ
入院期間は約1週間です。入院中創部の血種や感染、リード脱落等の合併症のチェックを適宜行います。
その他の植込み型デバイス
ICD
- ICDとは、英語の“Implantable Cardioverter Defibrillator”の頭文字を取ったもので、“植込み型除細動器”の意味になります。心室頻拍や心室細動などの、いわゆる致死性の不整脈の治療を行う医療機器です。
- この装置によって致死性不整脈を止める方法には、「ペーシング」と「電気ショック」の二つがあります。ペーシングは、不整脈より少し速く心臓を人工的に刺激する方法です。これで不整脈が止まってくれれば痛みは感じません。しかし、速い心室頻拍や心室細動はペーシングでは止まらないことがあり、その場合は電気ショックが必要になります。
- ICDにはペースメーカとしての機能も備わっており、脈が遅い時はペースメーカと同様にペーシングを行い脈の担保を行います。
心臓再同期療法(Cardiac Resynchronization Therapy, CRT)
- 心臓再同期療法とは重症心不全に対する治療法で、ペースメーカを使って心臓のポンプ機能の改善をはかる治療方法です。本来のペースメーカの治療は脈拍の遅い患者さんに対して行う治療方法ですが、CRTは心臓のポンプ機能(特に左心室)に何らかの障害をもった患者さんに対するペースメーカ療法です。
- 健康な心臓は十分な血液を全身に送り出せるように電気信号を順序よく伝えています。しかし心臓(特に左心室)に何らかの障害が起こると電気信号が早く伝わる部分と遅く伝わる部分ができて、心室が均等な動きをしなくなります。これを心室の同期障害といいます。もともとの心臓の動きが悪く、この心室の同期障害が加わるとさらに悪化して心不全の状態を引き起こします。このような状態のときにペースメーカを用いて心臓に伝わる電気信号の順序を整えてポンプ機能を助ける治療法が心臓再同期療法です。
文責:杉崎雄太