糖尿病・内分泌・代謝センター

高度肥満症の外科的治療

②(重要)入院や術後についてご理解頂きたい事

減量手術の前には必ず内科的減量治療を経験していただきます

減量手術は人生の大きな分岐点になります。一度胃を切ったらもとには戻せません。ですので、手術を切望して来院された場合でも、例外なく内科的減量治療をまず行っていただきます。最低でも6か月は月1回の頻度で通院していただき、やはり外科治療が望ましいと判断された場合は、次に原則2週間前後の内科入院を行っていただきます。減量手術前の内科入院で行うことを下に記します。内科治療中に自力で減量する自信が付き、手術を回避する方もいらっしゃいます。

合併症精査:

採血・尿検査(糖脂質代謝、肝機能、腎機能、ホルモンなど)、内臓・皮下脂肪測定、動脈硬化(心、脳、末梢血管)、静脈血栓症、睡眠時無呼吸、骨密度、上部消化管内視鏡、ピロリ菌など。

心理社会背景の聴取:

詳細な生活歴や病歴をインタビューし、さらにメンタルヘルスクリニック受診、臨床心理士による心理テストを施行します。これらの調査は、術後の不幸を回避するために必須のものとご理解ください

食事療法:

フォーミュラ食のコンビネーション法、または完全法を行っていただきます。腫大した脂肪肝を小さくすること(2週間で肝臓の脂肪が10%減るといわれています)、血糖を良くすることで、手術の安全性を高めます。また、術後も栄養失調やリバウンド予防のためフォーミュラ食を服用します。術前からフォーミュラ食に慣れていただくという目的もあります。

運動療法:

入院中は専門の理学療法士の指導のもと、トレッドミルやエルゴメーターを用いた有酸素運動を行います。関節障害のある方でも、可能な範囲内で対応できます。

その他、内科入院に関する注意事項:

  • 睡眠時無呼吸症候群が見つかった方に対しては、専門の医師が適応を判断、持続陽圧呼吸療法(CPAP)などの治療を始めることがあります。
  • ピロリ菌陽性の方には、除菌療法を行います。
  • 入院前から絶対禁煙です(喫煙者は手術を受けられません)。
  • 患者さんごとの病状や精神状態、生活状況を踏まえ、術前にチームカンファレンスを行います。手術による危険性が高いと判断される場合には、手術を回避する場合もあります
  • 内科入院終了後は一度退院し、改めて後日に外科入院となります。

外科入院について

手術の数日前に入院していただきます。外科の担当医による手術の説明がありますので、必ず大切なご家族様や、それに準ずるKey Personの方が同席するようにしてください。とくに手術の合併症について、十分理解するようにしてください。麻酔科的な診察や検査もあります。術後は1泊のみ集中治療室(ICU)に移動します。翌日からは一般病棟に戻ります。手術翌日から早速離床していただき、栄養士の指導の下で食事が開始されます。術後経過が良好であれば、術後およそ1週間で退院となります。

減量手術は「切ったら終わり」ではありません

術後に一番大切なのは、やはり食事・栄養管理です。術後の早期は蛋白質、各種ビタミン、ミネラルなど栄養素の欠乏に、術後1年以降はリバウンドの予防に留意する必要があります。当院における食事の具体例を簡単に紹介します。

手術翌日から:

水、ジュースや具なしスープの摂取を開始します。スプーンでごく少量ずつの摂取とし、食事回数は1日5回とします。

手術数日後~2週間:

蛋白摂取のためフォーミュラ食の併用を始めます(よって術前からフォーミュラ食の摂取に慣れていただく必要があります)。術後経過が良好であればこの期間に退院することになります。

2週間以降:

豆腐や温泉卵、ヨーグルトなどの半固形食を導入します。4週間以降は少しずつ固形食を始めていきます。術後4週間で約600~800kcal/日、1年後で1300~1500kcal/日程度の食事を摂取できるようになります。

小腸をバイパスした術式では、吸収不良が予想されるビタミンB1・12、脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・K)、鉄、カルシウムの定期的なモニタリングを行い、全ての栄養素の1日充足率が100%以上になるように、複数のサプリメントを組み合わせて永続的に摂取する必要があります。またバイパス術後には、高糖質食摂取によるダンピング症状にも留意する必要があります。術後1年以降は体重が再度増加に転じる方も多いので、長期的にフォーミュラ食を使用することを推奨しています。

減量手術では術後のチームサポートが大切です

我々の施設では、減量手術の対象者全員に対して、ご本人の承諾の範囲内で家庭や社会的な背景、過去の出来事などの聴取、メンタルヘルス専門医の診察、臨床心理士による心理検査を施行しています。肥満の方は、心や環境に「食べる」ことに走らなければいけない理由が存在し、「食べる」ことで精神のバランスを維持していることを良く経験します。減量手術はある意味この安定を崩す治療です。「食べる」という安全地帯から放り出された患者さんが、その後長期にわたっていかに自立的な人生を歩めるか、そこをサポートすることが我々の大切な仕事だと考えています。そういう意味で、ご家族のサポートが期待できるのか、職場の状況がどうなのかを我々が事前に知ることはとても大切です。最悪の事態として、術後に薬物・アルコール依存症に走ったり、離婚になってしまったりといった、精神的なトラブルの報告例もあるのです。また急激な身体の変化に伴って、ボディイメージや心理状態、立場などに多彩な変化が生じますが、そういった中で患者さんの人生が前向きに変化できるよう、メンタルの専門家によるカウンセリングや認知行動療法が必要になることもあります。我々の施設では、このような総合的な肥満治療チーム作りがなされています。内科入院中に患者さんと良好な関係を築き上げたスタッフ一同が、術後の外来でも患者さんをサポートします。

しかし、一番頑張らなければいけないのはご本人です。手術で人生すべてが変わるわけではありません。手術はあくまできっかけに過ぎません。あなたの健康と、あなたのすばらしい未来を、あなた自身の手でつかみ取ってください。そして、必ず通院を継続してください。

手術の費用について(平成29年12月26日現在)

  • 腹腔鏡下スリーブ状胃切除術 (保険診療)※概算費用は外来受診時にお尋ね下さい。
  • 腹腔鏡下胃バイパス術 175万円 (自由診療)
  • 腹腔鏡下スリーブバイパス術 195万円 (自由診療)
  • 腹腔鏡下修正手術 150万円 (自由診療)
※手術前には内科入院を行います。おおよそ2週間で自己負担分15万円前後です。費用は診療内容により変わります。個室に入院した際は個室代がさらに上乗せになります。
入院期間、病状などにより費用は異なります。詳細は、外来受診時に担当医にご相談ください。医事課で説明を受けられます。

※開腹(保険医療)での手術は原則的に行っていません。