多系統萎縮症

概括と症状
脊髄小脳変性症は、発現様式により遺伝性と非遺伝性とに大別されます。非遺伝性脊髄小脳変性症は、脊髄小脳変性症の60-70%を占め、多系統萎縮症(以下MSA, エムエスエーと略します)がその多くを占めます。MSAは、起立性低血圧(立ちくらみ・立位時失神)または排尿障害(頻尿・尿失禁および排尿困難・尿閉の両者を含みます)と、パーキンソン症候群(パーキンソン病でみられるような固さ、ふるえがみられますが、パーキンソン病の特効薬であるエルドーパがやや効きにくいもの。MSA-P型と呼ばれます)または小脳症状(ふらつきがあり、立位で足幅が開いているもの。MSA-C型と呼ばれます)の両方がある方が典型的です。MSAは、以前は3つの病気に分けて記載されました(オリーブ橋小脳萎縮症(OPCA)、シャイドレーガー症候群、線条体黒質変性症(SND))が、MSAの病理学的特徴である、神経膠細胞の細胞質内封入体(GCI)が明らかとなり、MSAが一疾患単位であることが確立しました。GCIには、パーキンソン病と同様に、アルファ・シニュクレイン蛋白の沈着がみられます。シャイドレーガー症候群の用語は広く用いられてきましたが、合意基準では、もはや使用しないとされました。その理由として、ほぼ同時期に確立した、純粋自律神経不全症(PAF, 起立性低血圧などの自律神経障害がみられるが、運動障害を欠くもの。パーキンソン病の類縁疾患とされます)と明確に区別するためであったのかもしれません。MSAでは、上述の脊髄小脳性失調症6, パーキンソン病と比べ、より多彩な症状がみられるため、細かい検査・治療対処を受けると良いと思われます。
検査
多系統萎縮症(MSA)で行われる検査を項目ごとに記します。
歩行解析: 歩行障害に対してビデオ歩行解析(モーションキャプチャー)/評価表評価(UMSARS, SARA, ICARS,など, 病気ごとに評価表があります)を行います。
脳MRI: 脳の形態をしらべます。MSAの小脳・小脳脚の萎縮、脳幹萎縮(橋クロスサイン)、基底核萎縮(スリットサイン)が典型的にみられます。
脳血流SPECT(スペクト): 脳血流の分布を調べます。小脳を含めた脳血流の低下を定量的に調べます。
髄液穿刺(ルンバール): MSAで、アルファ・シニュクレイン蛋白を測定し、診断に役立てる試みを行っています。ただしその測定は非常に日数を要するため、入院中に結果をお伝えすることができません。
遺伝子検査: 家族性MSAがごく少数報告され、全国集計が行われています。
(脳波: 脳の全体的機能(またはてんかん性の波の有無)をしらべます。誘発電位: SEP(感覚誘発電位)、ABR(聴覚誘発電位)、VEP(視覚誘発電位): それぞれの感覚の神経の通り道の働きをしらべます。神経伝導検査、筋電図: 末梢神経や筋肉の働きをしらべます。MSAではあまり行ないません。)
自律神経検査: 嚥下造影検査: むせや飲み込みにくさがないかしらべます。必要時、喉頭ファイバースコープ検査が耳鼻科で行われます。
フル・ポリソムノグラフィ検査: いびき(睡眠時無呼吸)・寝言(レム睡眠行動異常RBD)をしらべます。MSAでは、閉塞型主体の睡眠時無呼吸や、喉頭喘鳴がしばしばみられます。RBDもみられる方があります。詳細は、検査前に個別にご説明申し上げます。
心臓MIBGシンチ: MSAでは異常がみられません。しかし、パーキンソン病との鑑別のため、検査を行う場合があります。
キューエルガット(定量的排便機能検査) [QL-GAT]: MSAでは、その病気の一部として、便秘がみられるため、トランジット(カプセルを飲む)・便ラボ(直腸の圧力を測る)を行ないます。
膀胱自律神経検査(ウロラボ): 膀胱の圧力を測る検査です。前立腺肥大症(男性の排尿困難)、腹圧性尿失禁(女性の腹圧時の尿もれ)と異なり、MSAでは、膀胱自律神経系の病変による神経因性膀胱(しんけいいんせいぼうこう)が高頻度にみられます。MSAでは、過活動膀胱(尿もれ、頻尿)と、排尿困難、多量の残尿(不全尿閉)が、同時にみられるのが特徴的です。その病態を調べ、対処法を決めるために行います。同時に行われる括約筋筋電図では、パーキンソン病が正常であるのと比べ、MSAで高頻度に異常がみられ、MSAの脊髄(仙髄)病変を反映します。
起立性(ヘッドアップティルトテスト)/食後性低血圧検査: MSAでは、立ちくらみや食事中/食後の失神がしばしばみられるため、起立負荷/糖分負荷での血圧を連続して測ります。食後性低血圧を細かく調べるため、基準食(ラコール、栄養食品)を摂取することがあります。
末梢自律神経測定(心電図RR間隔・心電図フーリエ解析、ノルアドレナリン測定):立ちくらみのある方の臥位心電図の解析、血液中のノルアドレナリンを測定します。
皮膚温・脈波検査(サーモグラフィー、指尖脈波):冷え、ほてりのある方に行います。
心理検査: MSAの一部で、軽度の認知症がみられる場合があり、高次機能検査(頭の体操のような検査)を行います。
ストレス/うつ評価表: ストレス/うつのある方に対して評価表評価を行います。
歩行解析: 歩行障害に対してビデオ歩行解析(モーションキャプチャー)/評価表評価(UMSARS, SARA, ICARS,など, 病気ごとに評価表があります)を行います。
脳MRI: 脳の形態をしらべます。MSAの小脳・小脳脚の萎縮、脳幹萎縮(橋クロスサイン)、基底核萎縮(スリットサイン)が典型的にみられます。
脳血流SPECT(スペクト): 脳血流の分布を調べます。小脳を含めた脳血流の低下を定量的に調べます。
髄液穿刺(ルンバール): MSAで、アルファ・シニュクレイン蛋白を測定し、診断に役立てる試みを行っています。ただしその測定は非常に日数を要するため、入院中に結果をお伝えすることができません。
遺伝子検査: 家族性MSAがごく少数報告され、全国集計が行われています。
(脳波: 脳の全体的機能(またはてんかん性の波の有無)をしらべます。誘発電位: SEP(感覚誘発電位)、ABR(聴覚誘発電位)、VEP(視覚誘発電位): それぞれの感覚の神経の通り道の働きをしらべます。神経伝導検査、筋電図: 末梢神経や筋肉の働きをしらべます。MSAではあまり行ないません。)
自律神経検査: 嚥下造影検査: むせや飲み込みにくさがないかしらべます。必要時、喉頭ファイバースコープ検査が耳鼻科で行われます。
フル・ポリソムノグラフィ検査: いびき(睡眠時無呼吸)・寝言(レム睡眠行動異常RBD)をしらべます。MSAでは、閉塞型主体の睡眠時無呼吸や、喉頭喘鳴がしばしばみられます。RBDもみられる方があります。詳細は、検査前に個別にご説明申し上げます。
心臓MIBGシンチ: MSAでは異常がみられません。しかし、パーキンソン病との鑑別のため、検査を行う場合があります。
キューエルガット(定量的排便機能検査) [QL-GAT]: MSAでは、その病気の一部として、便秘がみられるため、トランジット(カプセルを飲む)・便ラボ(直腸の圧力を測る)を行ないます。
膀胱自律神経検査(ウロラボ): 膀胱の圧力を測る検査です。前立腺肥大症(男性の排尿困難)、腹圧性尿失禁(女性の腹圧時の尿もれ)と異なり、MSAでは、膀胱自律神経系の病変による神経因性膀胱(しんけいいんせいぼうこう)が高頻度にみられます。MSAでは、過活動膀胱(尿もれ、頻尿)と、排尿困難、多量の残尿(不全尿閉)が、同時にみられるのが特徴的です。その病態を調べ、対処法を決めるために行います。同時に行われる括約筋筋電図では、パーキンソン病が正常であるのと比べ、MSAで高頻度に異常がみられ、MSAの脊髄(仙髄)病変を反映します。
起立性(ヘッドアップティルトテスト)/食後性低血圧検査: MSAでは、立ちくらみや食事中/食後の失神がしばしばみられるため、起立負荷/糖分負荷での血圧を連続して測ります。食後性低血圧を細かく調べるため、基準食(ラコール、栄養食品)を摂取することがあります。
末梢自律神経測定(心電図RR間隔・心電図フーリエ解析、ノルアドレナリン測定):立ちくらみのある方の臥位心電図の解析、血液中のノルアドレナリンを測定します。
皮膚温・脈波検査(サーモグラフィー、指尖脈波):冷え、ほてりのある方に行います。
心理検査: MSAの一部で、軽度の認知症がみられる場合があり、高次機能検査(頭の体操のような検査)を行います。
ストレス/うつ評価表: ストレス/うつのある方に対して評価表評価を行います。
治療
MSAは難病ですが、症状の改善薬があります。パーキンソン症候群に対して、パーキンソン病に準じて、エルドパその他の薬を用います。小脳性運動失調に対して、タルチレリン(セレジスト)などを用い、運動・作業のリハビリテーションを行います。起立性低血圧に対して、塩分負荷食、下肢弾性ストッキングと腹帯を行い、十分でない時、昇圧薬(尿道をしめて残尿が増えることがあるので、注意して使用します)、ステロイド系塩分保持薬(血清カリウムが下がる場合はカリウムを補充します)を用います。自宅での臥位・座位・立位時の血圧測定が有用です。排尿障害は、過活動膀胱(尿もれ、頻尿)に対して抗コリン薬を用いますが、残尿が増えることがあるので、注意して使用します。残尿が100 ml以上ある場合、残尿100 mlに対して1日1回、残尿200mlに対して1日2回、間欠自己導尿(CIC, シーアイシー)を行います。残尿を減少させるアルファ遮断薬は、血圧が下がることがあるので、注意して使用します。睡眠時無呼吸、喉頭喘鳴に対して、簡易呼吸補助器(CPAP, シーパップ)を就寝中使用します。必要時、自宅での簡易携帯酸素飽和度計が有用です。MSAは厚生労働省特定疾患(公費負担対象)であり、必要時申請を行います。入院中の方は、入院の後半でお薬を開始し、副作用がないことを注意深く見届けてから、退院・外来通院といたします。その他の症状の治療薬についてもご相談下さい。なお、MSAに対して、治験(医師主導臨床研究)を行っておりますので、神経内科外来受付までご相談下さい。
お知らせ
佐倉病院脳神経内科が参加した「多系統萎縮症の国際診断基準第3版」が2022年4月刊行されました。