診療方針

概要と特色

東邦大学医療センター佐倉病院メンタルヘルスクリニックの概要

当院は都心と成田国際空港を結ぶ京成線沿線に位置しており、病床数447床からなる地域基幹病院です。
精神神経科はメンタルヘルスクリニックと標榜し、精神科病床は持たないものの、連携施設病院ならびに関連病院と連携して急性期治療にも対応し、一方では総合病院の特性である精神科患者の身体合併症対応や身体疾患に伴う精神症状や心理的社会的問題といったコンサルテーション・リエゾンサービスを積極的に展開してきました。特にうつ病等で休職を繰り返す勤労者の職場復帰支援に特化したデイケアを行っており、社会復帰援助に力を入れています。産業医活動を通じて企業との連携も強く、産業メンタルヘルス活動が活発に行われています。さらに緩和ケアチームに精神科医が関与していることから、緩和医療における精神科治療やチーム活動を習得できます。また当院が置かれている佐倉市からの要請に応じて、こころの健康相談や高齢者福祉課によるもの忘れ相談を行っており、一方では近年増加している在日外国人の精神科診断・治療にも積極的に取り組んでいます。このような中で臨床研究に取り組み、学会発表、論文発表を行うとともに、当地域での症例検討会や県内の研究会の運営にもかかわっています。

当院の専門医研修プログラムの連携施設

成田赤十字病院、中村古峡記念病院、船橋北病院

総合病院精神医学

一般病院連携(リエゾン)精神医学専門医

当院は総合病院精神医学会認定研修施設です。指導医を置き、当院で研修を行うことで学会専門医の取得ができます。学会の地方会である千葉総合病院精神科研究会での学会発表や地域の総合病院と連携して年3回の症例検討会での発表をしています。
コンサルテーションリエゾンでは、年間200例超の依頼があります。せん妄や気分症状に対する介入が多く、主治医として診療に当たることもあります。また抗NMDA受容体抗体脳炎や橋本脳症、NPSLEなどの器質性精神障害の診療も経験できます。

周産期メンタルヘルス

当院産科と連携し、精神疾患を有する患者さんの出産を多数受け入れています。
また外部より周産期メンタルヘルスを専門とする先生をお招きし、産科医師・病棟看護師らとの合同カンファレンスを定期的に開催しています。

緩和ケア医療

緩和ケアチームと協働し、末期がん患者さんの抑うつ・不適応反応に対する治療や心のケアにも携わります。

産業精神保健・職場復帰支援センター

大学病院で初めて大規模リワークデイケアを開設

当院は2007年11月に大学病院初の「うつ病患者のための職場復帰・就労支援に特化したデイケア(大規模)」を開設しました。 2011年10月には産業精神保健・職場復帰支援センターが設置され、現在まで延べ600人以上の方が利用されています。

ストレスチェックの先駆け

2015年12月に職場のストレスチェックが義務化されましたが、当院では2010年より病院職員に対するストレスチェックを実施し、院内の精神衛生環境を整備するとともに、ストレスチェック制度の法整備に向けて提言をしてきました。

労災疾病研究

平成28・29年度「精神疾患により長期療養する労働者の病状の的確な把握方法及び治ゆの判断に係る臨床研究」(主任研究者)…労災認定を受けて長期療養となった労働者の適切な症状固定時期に関する研究と社会復帰に向けた方策について研究報告を行いました。
平成28・29年度「職場におけるメンタルヘルス不調者の事例性に着目して支援方策に関する研究」(分担研究者)「主治医の立場からみたメンタル不調者の転帰に関連する要因と対応の調査研究」…気分障害あるいは不安障害の診断で休職経験のある勤労者の発症要因および転帰に関連する治療と復職支援について多施設共同研究を行い、産業医への提言をまとめました。
令和元年〜平成28・29年度研究に続く労災認定された長期療養者への効果的な社会復帰支援の研究を実施中です。

詳細はこちらでご確認ください。

高度肥満症治療

肥満はからだの病気?こころの病気?

精神科で扱う食行動異常に関連した疾患というと摂食障害が挙げられます。一方で過食嘔吐を伴わない「肥満」の患者さんを診察する際、体重に影響を与えない投薬を心掛けることはしますが、肥満の治療は内科で行うものだと考えられる精神科医が多いのではないでしょうか。しかし実際には「肥満症」は心理と行動の問題によって引き起こされる疾患だと考えられており、安定して見える精神状態の陰に過食というストレス代償行為が常態化している症例をしばしば認めます。診察の場において精神科医が単独で肥満症を解決することはありませんが、患者さんの特性やストレス状況を理解し、適切な助言を行うことは心の専門家の大切な役割であると考えます。

高度肥満症患者の全例にメンタルヘルスサポートを提供

最近の研究にて肥満とうつ病は双方向性にリスク要因となることが指摘されています。当院では、肥満外科治療を希望した高度肥満症患者の約半数が精神科受診歴があり、そのうち約2割の方は肥満症治療をきっかけに精神科治療が開始されていました。

最先端の肥満症チーム医療

当院は全国的にも有数の肥満症チーム医療を実践しています。内科・外科・精神科(心療内科)の各専門医に加えて、看護師・栄養士・薬剤師・理学療法士・臨床心理士が一人一人の患者さんに関わります。2010年7月からは消化器外科により減量手術が導入され、これまで100例を超える手術実績があります。当院では手術を希望される全ての患者さんに対して精神科が介入し術前評価と指導を行っております。

認知症医療の推進

当院が位置する佐倉市では、認知症患者さんの介護と医療の連携を目的とした「さくらパス」制度を運用しており、多くの患者さんが同制度を利用して診療・相談に訪れます。当科は脳神経内科と連携し、特に行動・心理症状が問題となる症例の診療に当たっています。

認知症初期集中支援チーム

認知症初期集中支援チームは、認知症やその疑いのある方の元に訪問し適切な医療に繋げる「ファーストタッチ」の役割を果たします。当院は佐倉市志津南部地区の認知症初期集中支援チームに参加しており、定期的なチームカンファレンスを通して、医療に結び付かない患者さんに対するアプローチの指導や実際の診療受け入れを行っています。

認知症サポートチーム(DST)の活動

当院では2018年4月に認知症サポートチームが発足しました。当科・脳神経内科の医師・認知症専門看護師・臨床心理士・精神保健福祉士・理学療法士からなる多職種チームで事例検討と病棟回診を行っています。認知症患者さんのケアの仕方や退院支援など病棟スタッフが抱える悩みに対しても支援できるよう活動しています。

多文化間精神医学

在日外国人の精神疾患に関する臨床研究や地域高齢者の生活支援や終末期ケアに関する調査や事例報告を行っています。多文化共生社会におけるマイノリティと呼ばれる人たちの自立をさまざまな支援団体と連携して援助しています。

集団認知行動療法

臨床心理士を中心に、通院での集団認知行動療法を行っています。(全12回・3か月)
また通常の個人カウンセリングや心理検査も行っています。