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【新型コロナウイルスワクチンに関して】2021年4月19日

新型コロナウイルスワクチンに関して        2021/4/19

 呼吸器内科 松澤康雄

新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)のワクチン(以下、コロナワクチン、あるいは単にワクチン)に関する問い合わせを多くいただいています。問い合わせが多いため、1人1人に、十分な説明をすることができません。そのため、ホームページで、説明させていただきます。

なお、以下の内容は、2021年4月15日現在の情報をもとに、65歳以上の高齢者の方に、ファイザー社のワクチンを打つ場合を念頭において記載しています。内容は、各種資料を参考に、呼吸器内科の松澤の責任で、私見も交えて記載しております。出展は省略しております。

[内容]
1. 持病によるワクチン接種の可否
2. 全身状態が悪い方へのワクチン接種
3. 厚生労働省のホームページの「注意が必要な人」について
4. 「アレルギー」がある場合の接種
5. 接種当日の体調不良時のワクチン接種
6. 接種直後(30分以内)の副反応
7. 接種当日~数日の副反応
8. 1回目のワクチンで、副反応を生じた場合の2回目のワクチン接種の可否
9. その他のワクチンに関する質問の回答

1. 持病によるワクチン接種の可否(外来通院中の方)

結論から申し上げますと、持病(基礎疾患)は、ワクチンをすすめる理由になることはあっても、打たない方がよい理由になることはありません。私の外来には、重い病気の方が多く通院されています。皆さんから、ワクチン接種の可否を聞かれますが、答えはいつも同じです。「ぜひ、受けてください。」(外来通院が困難であるほど、全身の状態が悪い場合は、2もあわせてお読みください。肺炎など、「急病」にかかっている場合は、5を参照してください。)
よく、「打って大丈夫ですか」と聞かれます。接種後の発熱や、極めてまれなアナフィラキシーなどの「副反応」が起きる可能性は否定できませんので、「厳密に大丈夫」とは言えません。どんな薬、風邪薬でも、抗生剤でも、抗がん剤でも、副作用(副反応)は、あります。その薬を使うことの利益と、副作用の危険を比べて、利益の方が大きいと考えるから、薬を使うわけです。ワクチンも同じです。新型コロナウイルス感染症にかかった場合の「死亡率」は、70台で5%、80台で12%にも及びます。ワクチンを打つことで、コロナで死亡する危険性は、大幅に下がります。ワクチンの危険性よりも、コロナの危険性の方が、桁違いに大きいのです。ですから、私は、皆さま(今回は高齢者)にワクチン接種をおすすめしています。

2. 全身状態が悪い方へのワクチン接種
様々な重い病気や障害のために、自力での生活が困難で、介護サービス、在宅医療などを受けている方、施設に入所している方を念頭に説明します。そのような方も、基本的には、1と同じです。施設での集団生活(デイケアやショートステイも含む)や、介護サービスの利用者は、新型コロナウイルス感染症の「クラスター」に巻き込まれる危険性も高く、その意味でも、ワクチン接種は重要です。しかし、ワクチンの接種後には、倦怠感、頭痛、発熱などの副反応が生じる事があります。一過性のもので、通常は大きな問題になりません。しかし、もともとの状態が著しく悪い場合には、ちょっとした発熱程度でも、全身状態が悪化するきっかけになる事もありえます。その点は、御理解いただく必要があります。コロナウイルスに感染するよりはまし、と考えて受けることをおすすめしますが、こうした場合こそ、主治医との相談が大事だと思います。

3. 厚生労働省のホームページの「注意が必要な人」について
「ファイザー社の新型コロナウイルスワクチンについて」というページがあります。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_pfizer.html


その中で、「注意が必要な人」という項目があります。この内容は、インフルエンザなどの他のワクチンの添付文書とほとんど同じ内容であり、コロナワクチンに関する医学的知見を元にしたものではありません。しかし、読んで不安を感じる方も多いと思いますので、以下、説明します。この項目は、ほとんど、松澤の私見です。

[注意が必要な人]  厚生労働省のホームページでは、以下の場合があげられています。
① 抗凝固療法を受けている人。血小板減少症または凝固障害のある人。
→筋肉注射で、内出血しやすく、痛みが強めにでる可能性はあります。しかし、細い針で、わずか、0.3mlの注射ですので、特に強調するほどの事でもないと思います。心配な方は、接種後、反対の手で、接種部位をしばらく抑えておくとよいかもしれません。(揉んではいけません。)
② 免疫不全の方
→生まれつきの免疫不全の方、抗がん剤、免疫抑制剤、副腎皮質ステロイドを使用中の方などは、一般に、ワクチンの効果が低くなります。ただし、ファイザーやモデルナ社の、mRNAワクチンは、これらの方にも理論的に効果は期待できます。(専門的に言うと、インフルエンザワクチンなどと異なり、液性免疫と細胞性免疫の両方を賦活化できるため。)免疫不全があれば、感染した時の危険性も高いので、むしろ、積極的に受けるべきです。
抗がん剤のうち、分子標的治療薬は、全く問題ありません。免疫チェックポイント阻害剤も、問題ありません。通常の抗がん剤(殺細胞性)は、骨髄抑制(白血球低下など)の時期を避けることができれば、その方がより望ましいとされていますが、よりよい効果を考えてのことで、白血球低下時に打つことで、危険性がますわけではありません。また、ワクチン接種後には、倦怠感や発熱がみられることがあるので、抗がん剤の副作用と紛らわしくなる可能性があります。接種するベストのタイミングについては、担当医と相談してもよいとおもいます。しかし、接種日を希望どおりに選べるとは限りませんし、基本的には、「打つこと」を優先、という考えでよいと思います。
③ 心臓、腎臓、肝臓、血液疾患や発育障害などの基礎疾患のある人
→厚生労働省のホームページには、注意が必要な人として、上記のような基礎疾患のある人があげられていますが、こういう基礎疾患のある方こそ、受けるべきです。
④ 過去にけいれんを起こしたことがある人
→けいれんを起こしたことがあるというだけで、接種をためらう医学的理由はありません。
⑤ 過去に予防接種をうけて、接種2日以内に発熱や全身性の発疹などのアレルギーと思われる症状が出た人
→他のワクチンとは、成分が異なりますので、関係ありません。
⑥ 本ワクチンの成分に対して、アレルギーが起こる恐れがある人
→これは、次の項で、説明します。

4. 「アレルギー」がある場合の接種
原則として、単にアレルギーがあるというだけでは、ワクチンを打たない理由にはなりません。他のワクチン、蜂、食品、花粉、ハウスダスト、ダニなどに対するアレルギーがあっても、原則としては、接種可能です。ただ、アレルギー体質の方は、ワクチン接種後30分間経過観察する様にします。(15分でなく)また、気管支喘息がある方は、しっかりとコントロールしておくように心がけましょう。
ファイザーのワクチンによる、アレルギー反応(アレルギーのうち、特に重いものをアナフィラキシーといいます。)の原因は、ワクチンの成分のポリエチレングリコール(PEG)であることがわかっています。ポリエチレングリコールに対するアレルギーがあるとわかっている方、また、類似性のあるポリソルベートに対するアレルギーがあるとわかっている方は、接種を避けるべきとされています。そこまで把握されている方は少ないのではないかと思いますが、PEGは、医薬品や化粧品に用いられているため、医薬品や化粧品のアレルギーのある方は、PEGに対するアレルギーがあるのかもしれません。しかし、残念ながら、PEGのアレルギーがあるかどうかを調べる検査はありません。現実的には、アレルギー体質の方、特に、医薬品や化粧品に対するアレルギーがあるは、念のため、観察時間を30分にすることをおすすめします。また、8に記載しますが、1回目のワクチンでアレルギー症状がでた場合には、2回目を避けた方がいいと考えます。

5. 接種当日の体調不良時のワクチン接種の可否
3で説明した厚生労働省のホームページで、以下の4つは、「受けることができない人」と明記されています。
① 明らかに発熱している人(37.5℃を目安)
② 重い急性疾患にかかっている人
③ 本ワクチンの成分に対し重度の過敏症の既往歴のある人
④ 上記以外で、予防接種を受けることが不適当な状態にある人
発熱している人にはワクチンを打たないというのは、他のワクチンの添付文書にも同様の記載があり、以前から、半ば常識のようになっております。他の急性感染症に罹患しているときにワクチンをうっても十分な免疫を得られないだろうことと、もともとの病気の悪化と、ワクチン副反応の区別が難しくなるという理由もあると考えられます。②の「重い急性疾患」は、定義が曖昧ですが、急病の場合は、その治療を優先すべきなのも、当然のことのように考えます。③は、4の、「アレルギーがある場合の接種」、で説明しました。④は、あまり意味のない文言のように感じます。

6. 接種直後(30分以内)の副反応
接種直後におきる副反応として重要なものに、アナフィラキシーがあります。アナフィラキシーとは重いアレルギー症状で、皮膚症状(発赤、じんましんなど)、呼吸困難、血圧低下、腹部症状(腹痛、下痢)のうち2つがそろったものです。4月4日までに国内で行われた109万6698回の接種で、アナフィラキシーに該当する症状が、79件発生したと報告されています。1万人に1人以下の頻度になります。アナフィラキシーは至らない、軽度
アレルギー症状(たとえば、蕁麻疹のみ、など)は、もう少し多くみられるようです。幸い、適切な対応で、大事に至った例はないようです。頻度が少ないこと、接種会場には、アナフィラキシー発生時に対応するための準備が必ずされているはずですので、過度な心配は不要ですが、接種後は、指示どおり、会場に15-30分、とどまるようにしてください。

7. 接種当日~数日の副反応
私、個人の経験を書きますと、注射は、全然痛くありませんでしたが、帰宅してから、打ったところが痛くなり、3日くらい続きました。1回目も2回目も、同様でした。生活や仕事に支障がでるほどではありませんでした。他の方に聞いても、同じような程度の事が多いようです。
接種当日から、翌日に、発熱、頭痛、倦怠感、筋肉痛、関節痛などが生じる事があります。1回目でもみられますが、特に、2回目に多いとされています。2回目の場合、37.5度以上の発熱は、全体では38%に、高齢者は若年者よりも少ないですが、9%程度には起きると報告されています。(38度以上は4%)過去に解熱剤で重い副作用がでた場合、主治医に禁止されている場合などを除き、手持ちの、あるいは、市販の解熱剤などを服用しても構いませんので、特に症状が重くない場合には、自宅で経過をみるようにしてください。症状が強い場合、持続する場合は、かかりつけ医に相談してください。

8. 1回目のワクチンで、副反応を生じた場合の2回目のワクチン接種の可否
ワクチンは、3週間隔で2回接種します。1回目で、アナフィラキシー(重いアレルギー反応)を起こした場合、2回目は決して受けないでください。アナフィラキシー以外の、軽いアレルギー、発熱などの副反応の場合は、2回目を受けることは可能です。しかし、ワクチンは1回でも、ある程度の効果が得られることがわかっていますので、1回目の副反応がかなり、つらかった場合は、2回目は、受けなくても良いのではないかと考えます。

9. その他のワクチンに関する質問への回答
① ワクチンは重症化を防ぐだけで、感染は防げないのですか?
インフルエンザワクチンと異なり、新型コロナウイルスワクチン(ファイザー)は、感染も、防ぐことができます。ただし、100%ではありません。
② ワクチンは他の人へ感染を防ぐ事ができるのですか?
このことは、十分には証明されていません。しかし、理論上、周囲への感染リスクを減らすことはできるはずです。
③ ワクチンを打ったら、すぐに効果がでるのですか?
ワクチンの効果がでるには接種後3週間かかります。接種後2週間は全く効果がありません。接種後1週間は、感染者がかえって増えるというデータがあり、接種により感染対策を怠るためと推定されています。接種後も、感染予防の継続は必須です。
④ ワクチンを2回打ったら、カラオケや宴会に行っても大丈夫ですか?
絶対にやめてください。ワクチンの効果は、100%ではありません。ワクチンの効果が90%とした場合、ワクチンを打った方が、感染予防に注意しなくなれば、残り10%の方が感染を広めてしまいます。感染予防策をしない場合、1人の感染者は、1カ月後には、数百人に増加します。ワクチンの効果など、消し飛んでしまいます。
重い病気のある方でも、65歳未満の方は、まだ、ワクチンを受けることができません。そんな中で、ワクチンを優先して受けた医療従事者や高齢者が感染予防策を怠り、周囲に感染を広めることは、絶対に許されることではありません。カラオケに行けるようにするためにワクチンを打つわけではありません。
⑤ どのくらい効果が続きますか?
ワクチン接種がはじまってから、あまり時間がたっていませんので、正確なデータは不明ですが、少なくとも6か月は十分な効果が持続するようです。もっとずっと長い可能性もあります。
⑥ 変異株にワクチンは効きますか?
現在、大阪などで流行している、イギリス変異株には、効果がある事がわかっています。しかし、今後、ワクチンの効かない変異株が流行するおそれはあります。変異株対策としては、ワクチンと感染予防策の徹底の両方が大事です。