中毒事例

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間違えやすい植物での過去の中毒例

山菜のニリンソウと有毒のトリカブトは、どちらもキンポウゲ科に属し、よく似た芽生えの若葉で間違えられます。

山菜   ニリンソウ

ニリンソウ ニリンソウ
一茎に二輪の花が咲くことからこの名前が付いています。林の中や沢沿いに自生し、早春短期間だけ見られることから、エンゴサクや、カタクリなどと「春の儚い命」スプリングエフェメラル(Spring ephemeral)と呼ばれます。北海道や東北では、葉を茹でて、水に晒して山菜とし、淡白な味で人気があります。しかしほとんどのキンポウゲ科は有毒植物といえるのですが、その中でもニリンソウは唯一山菜として利用されているものです。しかし低毒性はあるのであまり多く食べないよう注意してください。
モミジガサ モミジガサ
ニリンソウの他にも,ヨモギ,シャク,モミジガサ,ゲンノショウコなどが、トリカブトと間違えられやすいようです。

有毒   トリカブト

トリカブト若芽 トリカブト若芽
古くから有名な毒草です。ニリンソウの生育する環境に好んで生え、芽生えの若葉の形がニリンソウとよく似ているため、間違えて食べて中毒した例があります。植物全体、特に芽、塊根にアコニチンという猛毒のアルカロイドが含まれ、誤食すると嘔吐、下痢、口のしびれ、手や指の麻痺などの中毒症状が起き、重症の場合には死に至ります。過去にもトリカブトによる毒殺事件や事故死の例は、過去10年間では24件発生、患者数は52人でています。
その一方、漢方では烏頭(ウズ)や附子(ブシ)として使われる重要な医薬品資源植物でもあるのです。
山菜のセリと有毒のドクゼリは、どちらもセリ科に属し混生していることがあり、よく似た若葉で間違えます。

山菜   セリ

セリ セリ
春の七草の代表で水辺や湿地に自生する多年草です。日本全国で普通に見られます。年間いつでも摘み取れますが、春は根本から摘み、秋には新しい葉柄を摘みます。
特有な香りとさわやかな味と歯ごたえがあり,日本料理で和物や汁物には欠かせない植物です。細い根がたくさん生えています。

有毒   ドクゼリ

ドクゼリ ドクゼリ
有毒でセリに似ていることからこの名がつきました。特に春先の若葉が出始めのころ,セリとよく似ているため間違えやすいようです。日本全国でセリと同じような水辺や湿地に生えます。平成4年仙台市では、採ったドクゼリを職場で供し、食べた36人中33名が2時間後に発症、そのうち4名は呼吸停止状態の重篤な症状となったと、市の報告にありました。全草にシクトキシンという毒があり、誤食すると灼熱感があり、吐き気、腹痛、下痢、けいれん、全身の麻痺、呼吸困難などの中毒症状が起き,半数の人が死亡すると言われるほどの猛毒です。茎は太い竹節状になっています。
山菜のギボウシと有毒のバイケイソウは、どちらもユリ科に属し、よく似た芽生えの若葉で間違えます。

山菜   オオバギボウシ

オオバギボウシ オオバギボウシ
春先の芽生えや若葉はウルイの名で親しまれています。よく生えているのは、沢筋、渓流沿い、じめじめした林内に辺りの良いしめった草原などに、群生しています。お浸しや和え物として用いられるお馴染みの山菜で,特有な風味とぬめりがあります。春先の若芽を根元深く切り取って茹でて使いますが、苦みが強いようなら良く水で晒します。お浸し、酢味噌和え、生姜醤油、マヨネーズなどに良く合い、小口切りの野菜やむきえびなどとかき揚げにしても美味しく食べられます。
幅広の葉が重なって出る形態は、トリカブトとよく似ていますが、オオバギボウシには芯はありません。

有毒   バイケイソウ

バイケイソウ バイケイソウ
同じユリ科でもバイケイソウ属のバイケイソウと、コバイケイソウは深山か高山帯の湿った場所に自生しています。太い茎をもち独特な臭いの植物です。若葉の出始めの頃の形態は共に幅広の葉が重なりあったように出て非常に紛らわしいのですが、芯があれば、トリカブトです。
コバイケイソウ コバイケイソウ
平成7年には山梨県の清里高原で、キャンプ中の昼食でオオバギボウシと間違えてコバイケイソウを料理して、事故が起きた事がありました。幸い死者はありませんでしたが、その毒成分はベラトラミンやジェルビンなどで、特に全草や根に有毒成分が多く含まれ、口のしびれ,血圧降下、めまい,呼吸麻痺,心不全などの中毒症状が出て死に至る場合があります。(東京都都福祉保健局の発表)
若芽の葉の形や色は同じユリ科の猛毒のスズランに似ているため、若芽の頃まちがえるようです。

山菜   ギョウジャニンニク

ギョウジャニンニク ギョウジャニンニク
修行する行者が滋養強壮源として食べていたことからギョウジャニンニクとついた名前です。名前にもあるように全草にニンニク臭があるユリ科植物です。別名はアイヌネギで、アイヌの人々が北海道に自生するこの植物を保存食にしていたようです。味噌をつけて生食、茹でてお浸し、酢醤油や酢味噌和え、卵とじ、薬用酒などいろいろと利用価値の高い山菜ですが、本州では山地から亜高山帯の沢沿いや湿地帯に自生しています。野生種保護のため採取は禁じられている場所が多いので、見付けても根こそぎ採取はせず若芽と葉を摘むにとどめてください。

有毒   スズラン

スズラン スズラン
山地の草原、明るい湿り気の多い林下などで良く見られます。スズランの赤い実を子供が口にしての死亡事故が全米にある毒物中毒センターには、毎年多数報告されているそうです(参照;植松 黎著「毒草を食べてみた」)。実だけでなく花にも葉にも全草に毒は含まれており、宮城県保健環境センタ-から誤食が報告されています。その有毒成分は強心配糖体のコンバラトキシン、コンバラトキソール、コンバロサイドで、強心作用や血液凝固作用があり多量に摂取すると心不全の状態になります。園芸でよく植栽されているドイツスズランにも有毒成分は含まれていますので扱いには注意してください。
同じような場所に混生していて、芽出しの頃間違えやすいようです。

山菜   フキノトウ

フキノトウ フキノトウ
キク科の植物フキの蕾で、苦みも春の香りとして利用されています。自生地は明るい林下、湿り気のある傾斜地などです。
フキノトウはふっくらと丸みを帯び、苞には白い綿毛が密生していて、根茎で繋がっているので、ひねるようにしてもぎ採ります。生のまま汁物に浮かべたり、そのままの姿で、天ぷらにしたり、さっと茹でて油炒めや酢味噌和えにします。

有毒   フクジュソウ・ハシリドコロ

フクジュソウ フクジュソウ
フクジュソウ キンポウゲ科の有毒植物ですが、お正月の頃から早春の山野草としても愛好されています。自生地はフクジュソウと同じような場所です。平成4年4月徳島県の女性が、フクジュソウの根が「心臓によい」と人から言われたか何かで読んだのか根を掘って煎じ服用して亡くなったことがありました。フクジュソウは全草が有毒で、その毒成分は強心配糖体のシマリンとアドニンで、飲食すると嘔吐、呼吸困難になり心不全に至る危険性があります。薬用としての利用は禁物です。芽だしは共にふっくらと丸いので間違えやすいようです。フキノトウはフキの良い匂いがしますし、芽の下が根茎でつながっていますが、フクジュソウの芽には匂いはなく、芽の下には根が猩々に生えているので見分けられます。
ハシリドコロ ハシリドコロ
ハシリドコロ ナス科の多年草で、沢沿いの樹林下に生えています。植物全体、特にその芽や葉にもスコポラミン、ヒヨスチアミンなどの副交感神経を麻痺させるアルカロイドが含まれ、誤食すると嘔吐、けいれん、昏睡、呼吸停止などが起こります。過去10年間に5件、22名の中毒事例がありました。
共にユリ科の植物で、間違えるのは新芽の時期です。

山菜   アマドコロ

アマドコロ アマドコロ
全国の山野、林下に生える多年草で、薬用・観賞用に栽培されています。根茎は横に長く伸び、ひげ根があります。根茎の先端から一年に1本の茎を出し、茎には6本の稜があるのが特徴です。若い芽を土の中の白いところから切り取って天ぷら、卵とじバター炒めなどにし、茹でて冷水に晒し手酢味噌やごまであえます。よく似たナルコユリも同じように利用できます。ナルコユリには稜は無き茎は丸みを帯びています。

有毒とは言えないが悪臭がする   ホウチャクソウウ

ホウチャクソウ ホウチャクソウ
雑木林、林によく生えていますが、茎が枝分かれしており、地下茎はありません。摘むと悪臭がするので区別できます。口にすると嘔吐することもあるようです。嫌な臭いなのでとても食用には出来ません。

イタドリ・オオイタドリ・スイバ

イタドリ イタドリ
共にタデ科の植物で空き地、草原、河原、沢沿いなどに多く見らます。食べると酸味があり、この酸味はシュウ酸で、多食すると腹痛、下痢をすると言われています。

ニワトコ

ニワトコ ニワトコ
ニワトコはスイカズラ科の植物で明るい林中や林淵に多く見られ、その新芽は山菜として利用されますが、多食すると痛みのない激しい下痢をします。

チョウセンアサガオ

別名をキチガイナスとも言われる有毒植物です。薬用として輸入されたものが野生化しています。園芸でもよく見られるヨウシュチョウセンアサガオ(ダツラ)にも同じように有毒植物です。過去10年間での事例は23件あり(東京都都福祉保健局の発表)、ゴボウとの誤食によるようです。

キョウチクトウ

フランスではキャンプでキョウチクトウの枝を串焼きの串に使って7人死亡した事がありますし、同じ事が古代のアレキサンダー大王の軍隊でも起き、大勢の兵士を失ったそうです。キョウチクトウを燃してその煙で中毒症状を訴えた例もあります。

ジャガイモ

小学校の授業で栽培したジャガイモを、調理して食べて食中毒を起こした事例が平成12年に広島県で34人、13年に栃木県で29人、そして18年7月には東京都で77人の児童と報告されています。ジャガイモの皮や目に含まれる有毒物質のソラニン類が原因と発表されています。

スイセン

家庭でもよく植栽されていますが、野生化していたりします。葉をニラと間違って食べ死亡した例もあります。植物全体と鱗茎(りんけい)にリコリンというアルカロイドを含有し、誤食すると嘔吐、胃腸炎、下痢、頭痛神経麻痺,血圧低下,心不全などがあらわれます。

カロライナジャスミン

家庭園芸で栽培されている黄色い花のカロライナジャスミンはマチン科の植物ですが、香
りが似ていたことからモクセイ科のジャスミンと間違えて飲用して食中毒となったと群馬県で平成18年に報告されています。ジャスミン茶にはモクセイ科ソケイ属のマツリカを使っているので、香りや名前が似ているからといって安易に使うことはしないでください。
まずは119番への通報が第一です。救急車が来るまでは、以下の応急処置をしてみてください。
急性中毒の場合は、「中毒110番」でも聞くことが出来ます。

食べたものを吐き出す(毒が体内に吸収されるのを防げるでしょう。) 食べ残しがあればそれも持って行ってください。

吐くときは袋に吐いておき、持ってゆけば病院で毒の特定がしやすく、すぐにも治療に取りかかれるでしょう。
吐きにくいときは0.9%の塩水を飲めば吐きやすくなります。

水分を補給する

体内の毒を薄める為の効果的な飲み物は、胃腸の粘膜を保護してくれるタンニンを含む緑茶です。果汁や牛乳も効果的で、それに塩をひとつまみいれると、下痢や嘔吐で減少したナトリウムを補うことが出来ます。
  • 図鑑などで安易に判断しないで、確実に知っているものだけを採ること。
  • 芽吹きの時期は山菜と有毒植物が混生していることが多いので、ひとつひとつ確認すること。
  • 調理前に、分からない植物が混入していたら、もったいないと思わないで、迷わず捨てること。
  • 正しい調理をする。(水に晒す時間、ワラビのアク抜きやジャガイモの芽の除去など)
  • 安易におすそわけはしないこと。
  • 知識を深めるために、詳しい人に同行させて貰ったり、専門機関の指導を受けたりして確実な知識を身につけてください。

参考資料

東京都福祉保健局健康安全質「有毒植物による食中毒事例-過去十年
「東京都健康安全研究センター」
「宮城県保健環境センター」 
文春新書 上松 黎著 「毒草を食べてみた」 等
上記内容は、日本食品衛生協会刊行の「食と健康」2007年2月号に特集「気をつけよう春の山菜」として記載されたものです。

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