鈴木 翔
「被食者の視覚的捕食者認知が捕食者の色彩パタン多様化に及ぼす進化的 相互作用 -トカゲ目爬虫類の種間・種内島嶼個体群間の比較-」
被食者は,視覚,嗅覚,聴覚などあらゆる知覚機能を用いて捕食者を認知し,適切な回避行動をとり,生存率を高める.被食者が捕食者の色彩パタンや形態を視覚的に認知し,捕食者から安全な距離に身を置くことは,早期に捕食を回避する最も有効な手段である.一方,被食者による視覚的捕食回避は,捕食者の捕食成功率を低下させるため,被食者による視覚的捕食回避は,捕食者の色彩パタンに対する強い選択圧となり得る.
本研究は,伊豆諸島において,顕著な色彩多型を示すシマヘビとその主な被食者であるオカダトカゲに注目し,シマヘビの各色彩型に対するオカダトカゲの警戒の強さが,より高頻度の色彩型ほど強化されているのかを野外実験によって検証した.実験では,異なる色彩パタンを塗布したシマヘビの粘土モデルをオカダトカゲに提示し,モデルを無視し近寄るまでに要した時間の長さを,各色彩型に対する警戒度として定量化した.次に,実験を行った地点から半径200 mの範囲内で捕獲・目撃されたシマヘビの色彩型頻度を集計し,各色彩型頻度が高くなるほど,オカダトカゲの警戒度が高くなるかどうかを検証した.
2016年度
- 小林 篤「乗鞍岳に生息するライチョウの個体群研究と保全に向けた取り組み」
- 加賀山 翔一「日本広域に分布する淡水性カメ類の個体群研究と保護管理への取り組み」
- 伊勢崎 泰「侵略的外来種アメリカザリガニはオニヤンマ幼虫の分布と密度をどのように制限しているか -野外調査と室内実験による解明-」
- 大竹 海也「ニホンイシガメの陸上環境利用」
- 下藤 章「甲羅の年輪を用いた淡水生カメ類の成長解析」
- 鈴木 翔「被食者の視覚的捕食者認知が捕食者の色彩パタン多様化に及ぼす進化的相互作用 -トカゲ目爬虫類の種間・種内島嶼個体群間の比較-」
- 吉田 和哉「集団遺伝学的解析によるアライグマ Procyon lotor の侵入および分布拡大過程の推定」
- 宍倉 慎一朗「ニホンイシガメとクサガメの交雑に関する研究」
- 鈴木 広美「印旛沼流域における特定外来生物ナガエツルノゲイトウの生育環境の把握と洪水リスクの評価」
- 廣瀨 未来「房総半島南部におけるアライグマの行動圏・土地利用特性」
- 飯島 大智「乗鞍山における鳥類の標高分布」
- 斉藤 綾香「三宅島におけるアオウミガメの分布予測」
- 本間 李花「尾の自切がトカゲの生存率に与える影響」
- 松尾 野武彰「 インドネシアにおける移民政策および全土の環境情報に関するデータベース構築」
- 宮崎 未来良 「アカミミガメの生成熟と生長量の関係」
- 武田 広子「コウノトリ(Ciconia boyciana)の採食生態」
- 藤田 薫「伊豆諸島とその周辺本土におけるヤマガラの集団構造」「キブシをめぐる生物間相互作用」
- 村上 新 「シマヘビにおけるストライプパタンの個体発生—色素細胞の観察」