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東邦大学理学部
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お知らせ(2022/1/14)

 

英国オックスフォード大学の研究チームとの研究成果を公開

モデル生物を用いたDNA修復メカニズムの研究

  DNA損傷を修復してゲノムの安定性を維持することは、細胞や個体全体の健康にとって重要です。この修復機構が不能な場合、がんをはじめとする様々な病状につながります。これまで様々なモデル生物を用いた遺伝学的アプローチにより、DNA修復経路が明らかとなってきました。しかし、ヒト細胞のDNA修復を理解するために重要な修復経路のいくつかは、そのようなモデル生物に存在しません。その代わりに我々がモデル生物として扱う細胞性粘菌には、それらの経路が存在するため、他のモデル生物では難しいDNA修復メカニズムの研究のための代替モデルとして考えられています。

ADPリボシル化修飾を介したDNA修復と細胞周期の進行の新たな知見

 DNA損傷が生じると、ヒストンのセリン残基がADPリボシル化という修飾を受けます。セリン残基は細胞周期の進行に伴いリン酸化修飾を受けることも知られています。したがって、ヒストンH3のS10/28のADPリボシル化とリン酸化を区別した解析は困難でした。我々は、H3S10/28のリン酸化を維持しながらADPリボシル化を阻害する変異株を作製することで、H3S10/S28のADPリボシル化がDNA修復機構と細胞周期の進行を協調させることで、ゲノムの安定化に寄与することを示しました。

日本語での論文紹介記事

 【プレスリリース】
DNA修復と細胞周期の進行を制御する新たな仕組みを発見
-ヒストンタンパク質におけるセリンのADPリボシル化-

論文情報

【タイトル】
Linking DNA repair and cell cycle progression through serine ADP-ribosylation of histones.
【著者】
Julien Brustel, Tetsuya Muramoto, Kazuki Fumimoto, Jessica Ellins, Catherine J. Pears & Nicholas D. Lakin
【掲載誌】
Nature Communications
【DOI】
10.1038/s41467-021-27867-4