研究業績

研究業績

着任 (2022年)後の主要研究業績

プレスリリース記事にそれぞれの研究成果の詳細を日本語で説明しています。
*共同筆頭、#共同責任著者。

着任 (2022年)以前の研究業績

細胞の構造を内側から支える細胞骨格は、静的な枠組みを提供するだけでなく、細胞内外のシグナルに反応してダイナミックに変化し、細胞の形や機能に重要な役割を果たすことが知られています。そのため、細胞分裂、生殖、分化、がん浸潤、神経回路形成など様々な分野で研究対象となっています。これまでは、神経回路形成と機能に焦点をあて、以下に示す4つのテーマについて、電子顕微鏡、生化学反応、分子・細胞イメージング、個体表現型を手掛かりとして、細胞骨格動態の制御機構や生理的意義を調べてきました。
研究成果模式図

①神経活動依存的な樹状突起と軸索の伸長機構

目標:神経回路形成は、発達時の神経活動の制御を受けることが報告されていますが、その分子機構は不明でした。私たちは、神経活動に依存して樹状突起と軸索の発達を制御する分子メカニズムの解明を目指しました。

戦略:樹状突起と軸索の発達の定量的解析を実現する研究手法を確立し、神経活動の下流で生じるCa2+濃度変化に応じて制御される酵素に着目し、分子メカニズムの同定を目指しました。

成果:神経栄養因子(BDNF)と神経伝達物質(GABA)により、異なる局在を示すCa2+/CaM依存性タンパク質リン酸化酵素Iアイソフォームの各々が活性化し、異なるアクチン細胞骨格調節因子を介して、それぞれ樹状突起と軸索の伸長を選択的に制御することを発見しました。

意義:神経活動依存的な樹状突起と軸索の伸長の分子メカニズムの理解に重要な知見を提供しました。
  • Takemoto-Kimura S*, Ageta-Ishihara N*, Nonaka M, Adachi-Morishima A, Mano T, Okamura M, Fujii H, Fuse T, Hoshino M, Suzuki S, Kojima M, Mishina M, Okuno H, Bito H.
    Regulation of dendritogenesis via a lipid raft-associated Ca2+/calmodulin-dependent protein kinase
    CLICK-III/CaMKIgamma
    Neuron, 54:755-770, 2007
  • Ageta-Ishihara N, Takemoto-Kimura S, Nonaka M, Adachi-Morishima A, Suzuki K, Kamijo S, Fujii H, Mano T, Blaeser F, Chatila TA, Mizuno H, Hirano T, Tagawa Y, Okuno H, Bito H.
    Control of cortical axon elongation by a GABA-driven Ca2+/calmodulin-dependent protein kinase cascade
    The Journal of Neuroscience, 29:13720-13729, 2009
  • Horigane S*, Ageta-Ishihara N*, Kamijo S, Fujii H, Okamura M, Kinoshita M, Takemoto-Kimura S, Bito H.
    Facilitation of axon outgrowth via a Wnt5a-CaMKK-CaMKIα pathway during neuronal polarization
    Molecular Brain, 9:8, 2016

②細胞骨格同士の協調による樹状突起と軸索の効率的な伸長基盤

目標:樹状突起や軸索が伸びるという基本的な現象の分子基盤は、いまだに不明な点が多いです。突起伸長の中心構造である細胞骨格に焦点を当て、細胞骨格動態の分子機構の理解を目指しました。

戦略:細胞骨格としてはこれまで、微小管、アクチンフィラメント、中間径フィラメントの研究が多いです。私たちは、2000年代に第四の細胞骨格として報告されたセプチンに着目し、細胞骨格の新たな役割を見出そうとしました。

成果:神経突起の軸となる細胞骨格である微小管の伸長を、セプチン細胞骨格が制御することを見出しました。セプチンが、微小管の脱アセチル化(動的)反応が起こる場を作り出し、微小管のダイナミックな動きを起こして、突起伸長を促進することを発見しました。

意義:細胞骨格の新たな役割として、特定の分子を集積させ、反応を促進する足場として機能することを報告し、国際的に高く評価されました。
  • Ageta-Ishihara N, Miyata T, Ohshima C, Watanabe M, Sato Y, Hamamura Y, Higashiyama T, Mazitschek R, Bito H, Kinoshita M.
    Septins promote dendrite and axon development by negatively regulating microtubule stability via HDAC6-mediated deacetylation
    Nature Communications, 4:2532, 2013
  • Ageta-Ishihara N# (#共同責任著者) and Kinoshita M#.
    Developmental and postdevelopmental roles of septins in the brain
    Neuroscience Research, 170:6-12, 2021

③細胞骨格複合体はシナプスにおける伝達効率を最適化する

目標:神経回路内で情報が正しく伝達されるためには、情報のやり取りを行う軸索と樹状突起の結合部(シナプス)周囲の環境を適切に保つ必要があります。その分子メカニズムを明らかにすることを目的としました。

戦略:細胞骨格関連分子に着目し、当該分子を欠損させ、行動、生理、分子レベルの解析を適用することで、学習・記憶時の神経回路の機能を、行動から分子レベルで解析することを目指しました。

成果:神経細胞とともに脳内に多数存在するグリア細胞の細胞骨格複合体が、興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸の取り込みを担うトランスポーターの局在をシナプス周囲に限局させることで、効率的な学習が保障されることを見出しました。

意義:細胞骨格が、微小領域で分子を局在化させて、神経活動や学習効率を制御する初めての報告となり、国際的に注目されました。
  • Ageta-Ishihara N, Yamazaki M, Konno K, Nakayama H, Abe M, Hashimoto K, Ishioka T, Kaibuchi K, Hattori S, Miyakawa T, Tanaka K, Huda F, Hirai H, Hashimoto K, Watanabe M, Sakimura K, Kinoshita M.
    A CDC42EP4/septin-based perisynaptic glial scaffold facilitates glutamate clearance
    Nature Communications, 6:10090, 2015
  • Ageta-Ishihara N, Konno K, Yamazaki M, Abe M, Sakimura K, Watanabe M, Kinoshita M.
    CDC42EP4, a perisynaptic scaffold protein in Bergmann glia, is required for glutamatergic tripartite synapse configuration
    Neurochemistry International, 119:190-198, 2018

④細胞間コミュニケーションによるタンパク質の伝搬

目標:エクソソームは細胞から放出される小胞で、細胞骨格など様々なタンパク質を内包し、受け手側の細胞に内容物を伝搬します。近年、新しい細胞間コミュニケーション因子として注目されています。細胞同士で、様々なタンパク質がやり取りされる仕組みの解明を目指しました。

成果:新規翻訳後修飾Ubiquitin like 3(UBL3)化が微小管など特定のタンパク質を、エクソソームに内包することを発見しました。

意義:エクソソームに特定のタンパク質が封入される分子メカニズムを明らかにしました。
  • Ageta H, Ageta-Ishihara N, Hitachi K, Karayel O, Onouchi T, Yamaguchi H, Kahyo T, Hatanaka K, Ikegami K, Yoshioka Y, Nakamura K, Kosaka N, Nakatani M, Uezumi A, Ide T, Tsutsumi Y, Sugimura H, Kinoshita M, Ochiya T, Mann M, Setou M, Tsuchida K.
    UBL3 modification influences protein sorting to small extracellular vesicles
    Nature Communications, 9:3936, 2018
形態形成と機能を支える分子メカニズムの研究に学位取得時から一貫して取り組んできました。最近それらが評価され、2019年度日本神経科学学会奨励賞、2020年度文部科学大臣表彰若手科学者賞を受賞しました。

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