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東邦大学理学部
生物分子科学科
塚田研究室

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研究紹介

 

ウナギ血清毒

ウナギ、アナゴ、ウツボなどのウナギ目の血清には「毒」があり、体内に摂取すると、下痢、嘔吐、皮膚炎などを引き起こします。このウナギ血清毒の存在は古くから知られており、「イクチオヘモトキシン= ichthyohemotoxin(ラテン語でichthyo: 魚類、hemo:血液、toxin:毒)」と呼ばれていますが、ウナギ血清毒をコードする遺伝子は見つかっていません。近年、私たちはウナギ血清毒遺伝子を見つけました。私たちの研究室では、ウナギ血清毒のさまざまな生理作用を研究し、将来的には創薬研究へと発展させていきます。

ウナギの摂食研究

河川にいるニホンウナギ(黄ウナギ)は、食物連鎖の上位であり、活発にえさを食べますが、産卵のために外洋に出た銀ウナギは歯や胃が退化し、食べるのをやめて、河川生活で蓄えた栄養分のみで2500 km離れた産卵場まで泳ぎきります。また、養殖ウナギは、練りエサに体を埋め込みながら活発に食べますが、出荷時に冷水処理を行うと、数ヶ月以上食欲がなくなります。実際に、私の研究室で飼育した養殖ウナギは、最長17ヶ月の絶食に耐えたウナギがいます。このようにウナギは、「超省エネ体質」であり、ストレスで「長期的に食欲が戻らない」という面白い体質を持つことから、ストレス・摂食・代謝研究の新しい実験モデルになると考えています。私たちの研究室では、このユニークな体質を調べて、将来的には摂食障害の研究やダイエット研究へと発展させていきます。

ウナギの組織リモデリング研究

ウナギは淡水でも海水でも生きていける広塩性魚と呼ばれる魚です。ウナギがさまざまな浸透圧環境に適応できる理由のひとつは、ウナギが周囲の浸透圧変化に応じて、組織を変化(リモデリング)させることができるからです。淡水で飼育しているウナギを海水に移すと、淡水型の組織構造が破綻し、その後、海水型組織の新生が始まります。この組織リモデリングは2週間で完結します(つまり、たった2週間で淡水魚から海水魚になるということです!)。また、天然のウナギは、幼生(レプトセファルス)からシラスウナギへ変態したり、性成熟に伴って目や消化管などの組織を大きく変化させます。これらの形態変化にも組織のリモデリングが起きていると考えられています。本研究室では、ユニークな形態変化をするウナギを用いて、組織リモデリングに関わる分子の同定やその生理機能を明らかにしています。組織構造の破綻は、ヒトの病気においても起こりますが、ウナギのように完全に組織を再構築することはなかなかありません。本研究室で扱っている組織リモデリングの研究は、病態メカニズムの解明に繋がるだけでなく、再生医療の技術にも応用できます。
ウナギの特殊能力から組織構築の普遍的な分子メカニズムを紐解く

C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)の研究

C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)は、脳に発現するホルモンです。しかし、CNPの発見から30年経った現在もCNPの脳内機能は不明のままです。私達の研究室では、魚類で多様化したCNP分子に着目して、魚類におけるCNPの脳内機能を調べています。最終的には、魚類のCNPの機能からヒトを含めた哺乳類のCNP分子の機能を予測し、これまで謎であったCNPの脳内機能を明らかにすることを目的としています。
(上)魚類(硬骨魚類)で多様化したCNP分子:CNPは硬骨魚類で多様化し、保存されているが、他の動物種では淘汰されているものが多い。
(下)ウナギCNP3の下垂体における遺伝子発現:淡水で飼育したウナギのほうが海水で飼育したウナギよりCNP3の遺伝子発現量が高い。このことから淡水の浸透圧調節に重要なホルモンであることが示唆された。