トップページ > 研究紹介 > LC/MSによる環境試料中の界面活性剤の分析

LC/MSによる環境試料中の界面活性剤の分析

環境汚染物質の新しい分析法を開発!

~陽イオン界面活性剤の環境中での挙動を解明~

LC/MSを用いた分析法で低濃度の試料も分析が可能に

本研究室では代表的な環境汚染物質である界面活性剤のうち、難分解性界面活性剤の一つである陽イオン界面活性剤を取り上げ、分析法の開発と濃度や分布、生物凝縮も含めた挙動の解明に取り組んでいます。
陽イオン界面活性剤はヘアーリンスや衣料用柔軟仕上げ剤の主成分として日常的に使われていますが、微生物分解を受けにくく、高い毒性を持っています。ところが、その存在量が微量であり、表面吸着性が高く前処理の段階でその大部分が失われてしまうことなどから分析が困難で、その挙動はほとんど明らかにされていませんでした。
本研究室では液体クロマトグラフ質量分析(LC/MS)計を用いた新しい分析法を開発し、従来法では測定できなかった低濃度の試料の分析が可能になりました。

分析データから目に見えない現象を読み取る

実験では船橋市の河川水や東京湾一帯の海水をサンプリングして、環境水中に排出された陽イオン界面活性剤が水中や底質、水生生物中にどのように存在・分布しているかを分析していますが、千葉県内における河川水の汚染は年々改善されており、それがここ数年の分析結果にも現れています。
今後はさまざまな水質改善策によって界面活性剤の濃度がどのように変化するかについても調べていきます。また、底質や生物中には過去の汚染が高濃度に蓄積されている場合が多いので、これについても引き続き調べていく予定です。
このような研究において信頼性の高い分析データを導くことは大変ですが、分析を繰り返すことで得られたデータから、目には見えない人間活動や自然現象を読み取り、環境改善への道を探る研究を進めています。
<出展「大学案内2008」>