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東邦大学理学部
物理学科 宇宙物理学教室

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電荷を持つブラックホールによる高次元重力理論の検証について

 アインシュタイン理論では電荷を持つブラックホールは中性化のために存在しないと考えられているが、高次元重力理論では電荷を持つブラックホールが自然に導かれ、4 次元時空では Reissner-Nordström ブラックホールとして存在する可能性がある。したがって、電荷を持つブラックホールの存在は、高次元重力理論の検証につながる可能性がある。そこで本研究では、Reissner-Nordström ブラックホールと Schwarzschild ブラックホールまわりにおける天体の軌道を数値計算によって調べ、電荷の有無による軌道の変化を明らかにした。

重力赤方偏移の効果を考慮した BlackHole Shadow のコード開発

 2019 年の Black Hole (BH) Shadow の直接撮像の成功は BH 研究の新地平を拓いた。観測結果から情報を得るには BH Shadow の数値計算が必要となる。そこで本研究では、前年度に開発された BH Shadow の Ray-Tracing Code の再現・検証を行うと共に、(1) 任意の角度から BH を見込む場合、(2) 重力赤方偏移の考慮、の 2 点の拡張を行った。(1) の拡張により、観測者と BH 赤道面との角度を赤道面から極地へとずらすにつれて BH Shadow が縦方向に曲げられていくという事が明らかになった。

Gaia 衛星により測定されたセファイド変光星の年周視差と周期-光度関係

 本論文では、Gaia 衛星によって測定された年周視差データを用いて、宇宙の距離梯子の根本を担うセファイド変光星の周期-光度関係を決定した。従来、この目的のために利用できる年周視差データは限られていたが、Gaia 衛星によって年周視差データの質と量が飛躍的に改善した。最新の Gaia Early Data
Release 3 の年周視差データを用いた結果、周期-光度関係の決定精度が著しく向上し、従来に比べて傾きの誤差が 1/4 程度、切片の誤差が 1/5 程度に減少することがわかった。これは宇宙の距離梯子全体の精度向上に寄与しており、ハッブル定数などの精密測定に大きく貢献すると期待される。

セファイド変光星の周期-光度関係とハッブル定数

 ハッブル定数の測定値に関して、宇宙マイクロ波背景放射を用いた方法からは H=66.93±0.62 km/s/Mpc、距離はしごを用いた方法からは H=73.24±1.74 km/s/Mpc が報告されており、両者の間には有意な差異がある。本論文では、後者の土台となるセファイド変光星の周期-光度関係がハッブル定数の測定値に与える影響を調べた。その結果、周期-光度関係の変化に対してハッブル定数は非常に敏感であり、セファイドの年周視差の測定結果が 10%程度変化すると、上述した差異を解消しうることがわかった。これをもとに、Gaia 衛星による年周視差の精密測定の重要性についても考察した。

光子計数型検出器の開発に向けた吸着冷凍器およびアンテナ特性の評価

 光子計数型強度干渉計の実現に向け、0.8K 小型吸着式冷凍器の冷却評価と電磁界解析ソフトウェアを用いたアンテナ特性の評価を行った。冷却評価より、冷却温度は 0.70Kまで下がり、0.4mWの熱負荷に耐えられることからクライオスタット内部で運用が可能であることが分かった。アンテナ特性評価では、
アンテナの解析条件を決定したうえで二つの異なる解析ソフトの解析結果を比較し、アンテナの全長や幅を変えることで現設計よりも指向性のよいパラメータを決定できることが分かった。

テラヘルツ光子計数型検出器の開発に向けた読み出し回路の開発とその評価

 光子計数型テラヘルツ強度干渉計に搭載する SIS 検出器を運用するために FET(Field-Effect-Transistor)を用いた読み出し回路の開発を行った。SIS 検出器からの信号を読み取るためには、FET のキャパシタンスが 1fF 程度である必要がある。FET の基礎的な特性を見るために Si-JFET を用いた回路を設計し、ゲート電圧とキャパシタンスの関係を評価した。ソースフォロワ回路の基礎的な特性を見るために Si-JFET を用いて、電圧利得を評価した。両実験とも期待した特性が見れた。次に FET のキャパシタンス測定に向け GaAs-JFET のボンディングを行った。GaAs-JFET(ゲート長 100μ,50μ)のキャパシタンス測定を行った。