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准修練医インタビュー

こころにゆとりをもてれば、仕事も子育ても豊かで楽しい!

東邦大学医療センター大森病院
耳鼻咽喉科

瀬戸 由記子 医師
 
医師として誇りをもち、より自己研鑽して働きつづけたい——そんな希望を抱きながらも、多忙な職務のため、出産後、育児との両立に悩む女性医師も少なくありません。そうした悩みの解決をめざしてつくられた准修錬医制度。5歳の娘さんと2歳の息子さんの二児の母であり、耳鼻咽喉科において第1 号の利用者となった瀬戸由記子医師に、制度利用の経緯や実際に利用してみての感想などをうかがいました。

(「東邦大学男女共同参画推進センター ニューズレター2015.3Mar.」
インタビューページより)

瀬戸先生は1999 年に東邦大学医学部を卒業され、この4月で 卒後16 年目を迎えられます。そもそも卒業後はどのようなプランを描 かれていたのでしょうか?

瀬戸医師(以下省略) ■ 私は実家が耳鼻咽喉科を開業していたこともあり、子どものころから医者になるよう言われて育ち、その通りに医者になったタイプです。「よき臨床医になろう」と医学部時代を過ごしましたが、卒業時、気づけば25歳。結婚や出産はどうなるんだろうと、その頃初めて意識し、焦りましたね(笑)。当時、私は大学1年から付き合っていた同級生の彼がいて——それが今の夫で、それなりにいいお付き合いをしていましたが、働き出したらとても忙しくて、寝る時間を捻出するのもやっと。しかも日々の研鑽が必要な仕事です。季節の移ろいもわからない多忙な生活に、「早く結婚して子どもを産みたい」なんて思っていました。ところが、同じ耳鼻科医である彼に「それは専門医認定をとってから」と言われ……。そこで、認定試験を受け合格したのですが、専門医となり医長となって働くようになったら、とても楽しくなってしまって。結局、結婚は30 歳で無事できました(笑)

ちょうど仕事の脂がのっ た頃にご結婚されたのですね。

■ はい。外来、手術から、マネジメントや後輩の教育まで、さまざまな業務を担当し、忙しくもとても充実していました。けれども子どもには恵まれず、流産の経験もしました。激務で、というより、ホルモン異常の病気でした。その後36 歳で再度妊娠して生まれたのが長女です。

妊娠したら、仕事はどうしようと考えていましたか?

■ 実は当時はあまり明確なビジョンはなかった、というのが正直なところで。ただ、これまで母となった先輩の耳鼻科医は、大学に籍を残して週1くらい顔を出しつつ、自分で外勤先を見つけて働く、というのが一般的だったので、私もそうなるんだろうなと思っていました。ところが、1年半の育児休暇が終わる直前に担当教授から、准修練医制度の利用を勧められ、詳しい内容も知らないまま、利用することにしたのです。

利用してみていかがですか?

■ 時間的、精神的な余裕が生まれるので、子育てしながら仕事を続ける医師には、とてもありがたい制度だと思います。社会保険も適用され、安心して働けるのも、この制度の優れた点でしょう。恵まれた環境に感謝しています。

現在の勤務状況について教えて下さい。

■ 大学には週に2.5日出勤し、外来を担当しています。あとは半日外勤、半日は自宅で研究日にあて、その日は最近関心のある小児の聴覚障害についての研究を進めています。

3.5 日という仕事量についてはどう思われますか?

■ 私にとっては適切な量で、ワークライフバランスはすごくいいと感じています。子どもに関わる時間が増え、保育園の保護者同伴の遠足にも、後ろめたい思いをして仕事を休むことなく参加できています。それでも家事などは、いっぱい、いっぱいですが(笑)。また、研究はもちろん、語学学習など自己研鑽できる時間も増えました。フルタイムで勤務するより時間的にも精神的にもゆとりができたことは、医師としての生活も、母としての生活も、より豊かなものになっていると実感しています。

医師としても 自分に余裕があるというのは、患者さんと接するう えで大切なことですよね。

■ それと、「子どもをもった人生」という経験値も、医師としては大切だと思います。ただ、私が余裕をもっていられるのは、やや高齢になってからの出産で、耳鼻咽喉科医としての業務をある程度「やり遂げた」という自覚があるからかもしれません。その意味では、ある程度キャリアを積んでからこの制度を活用しつつ、仕事も子育ても楽しむのがいいかも…と、私は思います。

女性医師が子育てしながら働きつづけるために必要なことは何 だと思われますか?

■ 一番の壁は時間が見えないことです。たとえば手術の担当医となれば、その患者さんに対しては全責任を負いますから、何かあったらすぐ対応できるようにしたい。となると、自分以外にわが子の世話をする人がいないと、小さい子を育てながらの勤務は至難の業です。私自身、手術も好きなので再開したい気持ちもありますが、責任の重さを考えると、今の私の状況ではなかなか難しいです。ただ、「時間が見えない」というのは子育て中の女性医師だけの問題ではなく、男性医師や要介護者を抱える家庭などにも共通する問題で、働く現場の過酷さが医療全体の疲弊につながることでもあるので、 医療界全体でいい工夫ができればと思います。

育児をすることにより、仕事面での変化はありましたか?

■ それまでは「仕事が人生のすべて」でしたが、子どもが生まれて自分の生活があったことを思い出しました(笑)。それからお子さんを連れてくるお母さんの気持ちがすごくよくわかるようになりましたね。かつては、「そんなことで夜中に来なくても」と心の中で思ったりもしましたが、今では「心配だよね、わかる、わかる」と(笑)。母としての視点が加わったので、お母さんへの説明も、ツボをついてできるようになりました。

今後、医師として目指している方向性を教えてください。

■ 小児の難聴外来を始められたらいいな、と考えています。現在、その分野のエキスパートの病院を見学するなど勉強させていただいています。こうした機会を得られるのも、大学に所属しているからこそと感謝しています。

子育てとの両立の秘訣など、後輩へのメッセージをお願いします。

■ 仕事も子育ても「がんばる」というより「楽しむ」ことが大切ではないでしょうか 。子どもとの生活は思い通りにはならないし、「こうしなくては」とがんばりすぎると、疲れちゃいます。たとえば洗濯物をあと1つ干せば終わるのに、下の子がチョロチョロして干せない。そんなときは「あ、もうやめた」と(笑)。そうなるには、性格もあるかもしれませんが、自分にある程度のこころのゆとりが必要。その意味でもこの制度の力を借りるといいと思います。いろいろな状況でこの制度を利用する方がいらっしゃると思いますが、私の経験からは、できれば医師としてガッツリ勤務した経験を得てからの利用をお勧めしたいかな、と思います。

最後に、男女共同参画推進センターへの要望をお聞かせください。

■ 相当支援いただいているので、これ以上は……(笑)。保育園も東邦大学保育園に通園中で、病児保育も利用しますが、どちらも子どもたちを温かく見守って下さり、素晴らしい環境。安心して預けられ、仕事に励むことができています。保育園は40 年の歴史があって、医学部に卒園生がいたりもします。こうした東邦ならではの優れた歴史を、今後も刻みつづけていただきたいですね。
【センターからのメッセージ】
准修練医制度は、子育てのためにフルタイムでの勤務ができない等、それまでと同じスピードで階段を昇り続けられなくなった時に利用し、そして再び階段を昇れるようになった時に戻ってくるための制度です。今回のインタビューでは、本制度について”ある程度研鑽をつんでから利用したほうがよい”というアドバイスをいただきました。次回は、また違ったご経験談も伺ってみたいと思います。