グループインタビュー・アンケート調査(教職員及び学生向け調査)
医学生に対する“男女共同参画に関するアンケート”(平成24年1月~2月)
目的
男女医学生が育児・介護、またキャリアの継続についてどのような意識を持っているかを調査し、早期から取り組める継続就労支援を検討するために実施した。
方法
東邦大学医学部の1~5年次に在籍する計543名の学生を対象とした。講義後にアンケートの趣旨と内容、自由意思の調査であることを説明し、協力を求めた。質問紙は、米国内科学会(ACP)日本支部Women’s Committeeの学生が中心となって作成した“男女共同参画に関するアンケート”(医療の質・安全学会誌 5:306-314,2010)を一部改変して使用した。結果はIBM社のSPSS Statistics20を用いてクロス集計およびカイ二乗検定を行った。クロス集計表の度数が5未満の場合は、フィッシャーの直接確率検定を行った。さらに有意差が見られた場合にその特徴を把握するため、調整済み残差を算出し検討した。全回答者443名のうち3名は、性別・学年の記載がなく無効回答とした。さらに40名は、単一回答項目で複数回答をしていたため、適宜分析から除いた。
調査内容
①性別などのデモグラフィック情報に加え、②結婚、子どもを持つことについて、子育て参加について、③介護について、④医師という職の継続について尋ねた。
結果
回答者の属性
平成24年1月4日~2月24日の間で440名(回答率81%)からの回答を得た。調査協力者は男性267名(61%)、女性173名(39%)であった。また1~3年の低学年の在籍生は280名(64%)、高学年は160名(36%)であった。
結婚、子育てに関して
■結婚、子どもを持つこと
男女ともに、90%を超える学生が結婚を希望し、将来子どもを持ちたいと答えており学年による違いはみられなかった。
男女ともに、90%を超える学生が結婚を希望し、将来子どもを持ちたいと答えており学年による違いはみられなかった。
また、結婚を希望する群では98%が子どもを持ちたいと答えている一方、結婚願望がない群で、子どもを持ちたいと答えたのは27%に留まっている(χ2=232.390, df=1, p<.001)。
「子どもを持ちたい」という質問に「いいえ」と答えた28名(男性17名、女性11名)にその理由を尋ねたところ、男子医学生の8名(47%)、女子医学生の4名(36%)が育児への不安を挙げている。また、「どのような対策があれば子どもを持ちたいと思うか」という質問に対しては、下記表のとおり理由にばらつきがみられた。今回のアンケートを開発し医学生に実施した遠藤ら(2010)の調査では、男子医学生は「時間的に困難」に次いで「育児への不安」が多く、女子医学生は「育児への不安」を挙げており、本調査の結果と同傾向であった。
■子育て参加
子どもを持ちたいと答えた409名に対して「子育てに参加しますか」と尋ねたところ、男女ともに90%以上が子育てに参加すると答えている。
子どもを持ちたいと答えた409名に対して「子育てに参加しますか」と尋ねたところ、男女ともに90%以上が子育てに参加すると答えている。
その一方、「育児休暇を自分がとるか、パートナーがとるか、交替でとるか」という質問に対しては性別によって有意な違いがみられた(χ2=163.969, df=3, p<.001)。男子医学生の90%が「パートナーもしくは交替でとりたい」と答え、育児休暇を「自分でとる」と答えたのは4%であった。一方、女子医学生は52%が育児休暇を「自分でとりたい」と答え、1%のみが「パートナーにとってほしい」と答えている。
また、「子どもがいること、子育てをすることに不安を感じるか」という質問に関しては、男女の不安の傾向に違いが見られた(χ2=35.399, df=1, p<.001)。女子医学生の78%が不安を感じると答えたのに対し、男子医学生で不安が感じると答えたのは49%に留まった。女性が男性に比べて不安が高い傾向は、低学年・高学年ともにみとめられた。
「子どもがいること、子育てをすることに不安を感じる」理由について尋ねたところ、男性では「育児への不安」が一番多く、次いで「職場に迷惑をかける」が挙げられた。一方、女性では「職場に迷惑をかける」に次いで、「育児への不安」が挙げられた。また、「どのような対策があればその不安は軽減されると思いますか」の質問には、男女ともに「職場のフォロー体制」が一番多い回答であり、先行研究(遠藤ら,2010)と一致する結果となった。
■介護に関して
「家族の介護により、医師の仕事を休んだり、減らしたりすることに不安を感じますか」という質問には、性別による有意な差がみられた(χ2=4.105, df=1, p<.05)。
「家族の介護により、医師の仕事を休んだり、減らしたりすることに不安を感じますか」という質問には、性別による有意な差がみられた(χ2=4.105, df=1, p<.05)。
また学年によっても差がみられ、低学年では男女ともに60%が「不安を感じる」としているが、高学年では81%の女子医学生が「不安を感じる」と述べており、男子医学生の61%を上回っている。女子医学生のみで、高学年での不安が上昇していることは留意すべき点である。
「介護によって医師の仕事を休んだり、減らしたりすることによる不安」の理由としては、男女ともに半数近くが「職場に迷惑をかける」を挙げている。また、不安が軽減される対策としては、全体の半数以上が「職場のフォロー体制」を挙げている。
■医師という職の継続について
「医師を定年か。定年相当の年齢まで、ずっと続けたいですか」という質問に対し、8割が「続けたい」を選択している。医師を続けたいという希望は男女ともに高く、学年差もみられなかった。また、結婚願望や子どもを持ちたいか否かと医師という職の継続には関連が見られなかった。
「医師を定年か。定年相当の年齢まで、ずっと続けたいですか」という質問に対し、8割が「続けたい」を選択している。医師を続けたいという希望は男女ともに高く、学年差もみられなかった。また、結婚願望や子どもを持ちたいか否かと医師という職の継続には関連が見られなかった。
「医師を続けたくない」、もしくは「続けたいが続けられないと思う」と答えた73名中「続けたくない、続けられない」理由を選択した54名において、男性では「他の職につく」が一番の理由として挙げられたが、女性では「結婚・子育て」が一番多かった。先行研究(遠藤ら,2010)においても、女子医学生では圧倒的に「結婚・子育て」が多いことが指摘されており、継続就労において「結婚・子育て」といったライフイベントは女性にとって大きな不安をもたらしていることが推察される。
また、「続けたい」を選択した344名に対して「続けていくために工夫していることあるいはしようとしていること」を尋ねたところ、男子医学生の30%が「体力作り」を挙げている。女子医学生の理由はばらつきがみられるが、一番多いのは「理解者のネットワーク作り」(11.6%)であった。