次世代育成をめぐって

第5回 (2018年3月)
皆さん、こんにちは。3月になりました。次世代育成をめぐってお話してきたこのコラムも5回目の今回が最終回です。
エリクソンのライフサイクル理論、次世代育成がテーマといえる第7段階の次は、成熟期/老年期の第8段階です。第8段階の発達課題はインテグリティintegrity、統合と訳されることの多いものです。
インテグリティという用語は、人格の高潔な状態を表す用語ということです。人生の後半で、自分の人生を“受容”できるか、これまでの人生がそこそこ良かったという感覚を持てるかどうか。持てることが大事だということです。そして、そのインテグリティに到達できるのは、何らかの形で物や人を世話してきた人であるとエリクソンは述べています。
人は、突然老人になるわけではありません。老年期に幸せであるかどうかは老年期だけでなく、それまでの生き方が反映されてくるわけです。第7段階の成人期に次世代育成ができることは、人生全般の満足と関わることになるのですね。
ここで大事なのは、「何らかの形で」というところでしょう。前回お話ししたように、一言で次世代育成といっても、直接間接いろいろな形があります。
前回、私自身は直接の次世代育成の仕事以外に、精神療法を通して間接的に次世代育成をしていると感じてきたことをお話ししました。これは「人生をより良く生きるお手伝い」の仕事だと思っています。患者さんは、本格的に心身の症状に苦しんでおられる方から、表面的には普通以上に立派に社会生活をしておられる方までいろいろです。共通しているのは、何らかの生き辛さを自覚し、それを何とかしたいと思っておられるということだと思います。人を援助するという仕事は、直接何かが生産されるのではないけれど、その人がまた人とつながって、何かを生産していく、間接的な次世代育成であると思います。皆、さまざまな形で次世代育成に関わっています。
次世代育成を考える皆様の人生が実り多いものでありますように。またどこかでお会いしましょう。
(矢吹弘子 東邦大学ダイバーシティ推進センター・非常勤講師/矢吹女性心身クリニック・院長)
第4回 (2018年2月)
こんにちは。ダイバーシティ推進センター非常勤講師の矢吹です。
次世代育成をめぐってお話ししてきたエリクソンの理論、第5段階「青年期」の次は第6段階「若い成人期」、そしていよいよ次世代育成が直接のテーマになる第7段階「成人期/壮年期」に入っていきます。
第6段階の若い成人期の発達課題は対人的な「親密性」です。親密性とは、異性との親密性だけでなく、あらゆる他人との親密性、ひいては自分自身との親密性を指しています。
その第6段階を経て、第7段階の成人期では「ジェネラティヴィティ」が発達課題です。「ジェネラティヴィティ」とは、エリクソンによる造語で、「生殖性」「世代性」「生産性」などと訳されてきた用語です。
生殖性と言いますと、子どもを産み育てること、と理解しやすいものです。しかしエリクソンはこのジェネラティヴィティという用語において、子どもを産み育てることももちろん含んでいますが、もっと広い意味であることを解説しています。すなわち、「次の世代を確立し、導くことへの関心」であり、創造的な営み、何かを次世代に伝えるという、まさに次世代育成を指して、この用語を用いています。一方で、単に子どもがいるというだけでは、この課題を達成したことにはならないことも述べています。
私自身は長い独身時代、子どもを持つこととは無縁だった時に、自分は心療内科臨床や精神療法を通して、間接的に子育てに関与しているのかなと感じていました。子育て中の人の仕事をサポートするのも間接的な次世代育成でしょう。次世代育成は子どもを直接産み育てること、社会の子育てをサポートすること、そして職業面でも直接間接に次世代を育てること、と多面に存在するのだと思います。
ちなみにエリクソンはこの時期の重要な関係の範囲として、「労働における分業と家庭内における分担」をあげています。次世代の健全な育成には、家庭内外を問わず幅広く周囲との連携分担が欠かせないということですね。







