第1回TUGRIPセミナー
本セミナーは終了しました。多数のご参加ありがとうございました。
今年度のTUGRIP採択事業は、医学部の中野裕康先生を代表に「生体組織の4次元リモデリング 機構破綻による疾患発症・重症化メカニズムの解明と医療技術シーズの創出」のテーマに 取組んでいます。
この度、中野裕康教授が世話人として、TUGRIP採択事業の一環として学内の研究力推進のため、本学の教職員特に若手研究者を対象としたセミナーを開催いたしました。
本セミナーは、免疫疾患病態制御学講座准教授の西尾純子先生により「腸内微生物叢と宿主の相互作用機構」をテーマのご講演いただきました。 新型コロナウィルス感染症拡大防止のため、一堂に会する形式での開催とはなりませんでしたが、オンライン開催であるが故に、習志野キャンパスや大橋病院そして佐倉病院とすべての地区から参加申込があり、78名で開催となりました。
質疑応答も活発に交わされ、本学の更なる研究推進の機運を高める会となりました。
《開催概要》
◆日 時:2020年8月20日(木)17:30 -18:30
◆参加者:78名(オンライン参加)
◆セミナー内容:
【テーマ】
「腸内微生物叢と宿主の相互作用機構」
【演 者】
医学部 免疫疾患病態制御学講座 西尾 純子 准教授
【講演要旨】
この10数年の間で、腸内微生物が生体の恒常性維持や疾患に深く関わっていることが明らかになっ てきました。ディスバイオーシス(腸内微生物叢の多様性が低いこと)は、炎症性疾患やがん、代謝 性疾患など多くの疾患に悪影響を及ぼします。
腸管局所では、特定の腸内細菌種が特定の 免疫細胞の活性化や制御に関与し、粘膜上皮細胞から分泌されるムチンや抗菌ペプチドと いった粘膜バリアー機能を増強あるいは低下させ、腸管の恒常性維持あるいは組織傷害をもたらします。
一方で、腸管組織は非自己である多様な腸内微生物と接しているにも拘わらず、 それらからの攻撃を免れ、組織傷害が起こらないのは、私たち宿主の末梢性免疫寛容機構が成立して いるからとも言えます。
このように、腸内微生物と生体は様々な機構 で相互作用しています。
本セミナーでは、私たちの研究成果を中心に、腸内細菌叢と宿主の相互作用機構について紹介します。 さらに、腸内微生物の中で未だその機能が明らかにされていない、腸内バクテリオファージの研究に ついても一部紹介します。
【参考文献】
1.Sarashina-Kida et al. Gallbladder-derived surfactant protein D regulates gut commensal bacteria for maintaining intestinal homeostasis. Proc Natl Acad Sci U S A.114(38):10178-10183 (2017)
2.Nishio J, et al. Requirement of full TCR repertoire for regulatory T cells to maintain intestinal homeostasis. Proc. Natl. Acad. Sci. U S A. 112(41):12770-12775 (2015)
3.Nishio J, Honda K. Immunoregulation by the gut microbiota. Cell Mol Life Sci. 69(21):3635-50. (2012)
【世話人】
医学部 生化学講座 中野裕康 教授