第2回TUGRIPセミナー
本セミナーは終了しました。多数のご参加ありがとうございました。
本学の教職員・学生を対象とした 第2回TUGRIPセミナーは令和2年度中野裕康先生を代表にとする採択事業の一環として開催しました。
第2回のテーマは、疾患の病態理解に繋がる新たな 分析手法の実用例と応用可能性について医学部 解剖学講座 微細形態学分野 講師の 恒岡洋右先生 にご講演いただきました。
基礎分野から臨床現場の方まで幅広い参加があり、活発な質疑応答が交わされ、感動の声も寄せられました。
《開催概要》
◆日 時:2020年12月24日(木)17:00 -18:15
◆参加者:48名(オンライン参加)
学長、医学部長、全学部の教員ならびにスタッフ、そして大学院生さらに学部生の参加もございました。
◆セミナー内容:
【テーマ】
「短鎖ヘアピンDNAを利用した多重蛍光in situ hybridization — 簡便・超高感度な組織内mRNA検出法 — 」
【演 者】
医学部 解剖学講座 微細形態学分野座 恒岡 洋右 講師
【講演要旨】
組織における様々な遺伝子やタンパク質の発現動態を明らかにすることは生命現象や 疾患の病態を理解する上で必須である。近年、次世代シークエンサーなどの様々な手法の 開発により膨大な生体情報が利用可能になりつつある。しかし、多くの手法は手軽に 利用するには高額であり、研究者の多くが技術の恩恵を得られていない現状がある。 In situ hybridization (ISH) 法は細胞や組織の形態を保ったまま核酸の局在を検出する 方法であり、その手法は多岐に渡る。この10年間でISH法における様々な技術革新がおこり、 RNAscope、viewRNAなどの手法が開発され利用されてきた。しかしながら、これらは組織 へのダメージが強く、特別な処理を行うために免疫染色などの他の手法を組み合わせ にくいこと、導入費用だけでなく消耗品も非常に高額であり、普及への障害となっている。
In situ hybiridization chain reaction (isHCR)法は1分子イメージングが可能であり 多重検出が短時間でできる技術として開発され、最先端の研究に利用されている。isHCRの 高いシグナルノイズ比、組織への低ダメージ、操作の簡便性から基礎研究から臨床利用に おいてもその有用性は疑いないが、やはり高額であることが難点であった。その理由として 検出に用いるDNAが長いヘアピン構造を持つために合成することが難しく、精製が必要となる ことなどが挙げられる。そこで我々はisHCR法に用いるヘアピンDNA配列を検討し、短い鎖長 でも安定なヘアピン構造を形成できる配列を見出した。この短鎖ヘアピンDNAを用いた isHCR法は既存の長鎖DNAを用いた手法と同様の長所である高いシグナルノイズ比を備えて いた。さらに鎖長を短くしたことにより、内在性の蛍光タンパク質をそのまま検出できる ほどの組織の保存性・組織へのヘアピンDNAの浸透性の向上・シグナルの大幅な向上・ 操作時間の短縮化を実現することが出来た。また、コスト面においても既存の手法の 40%以下のコストに抑えられることが可能になった。
本発表では我々の開発した短鎖ヘアピンDNAを用いたisHCR法の実施例と応用可能性 について論じる。
【参考文献】
Tsuneoka Y, Funato H (2020) Modified in situ hybridization chain reaction using short hairpin DNAs. Frontiers in Molecular Neuroscience, 13:75
【世話人】
医学部 生化学講座 中野裕康 教授